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ユニオンビースト ~霊獣と共に生きる者達~  作者: 杏子
第二章 レジェンド・オブ・レジェンド
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3話 目撃

ガントの店で皆と食事をしていると、ドラグルを見たと言う者が現れた。

3話 目撃




 それから二カ月が過ぎた。


 今日が非番のアッシュはディアボロとガントの店に向かっていた。



 ガントは腕のいい鍛冶職人で、アルタニア国が襲撃された時にクレモリス国に逃げたが、平和になってから再びアルタニア国に戻って鍛冶屋を営んでいる。


 そこに弟子入りしている[バート]の姉の[アニータ]とアッシュは婚約中だ。


 アニータも住み込みでガントの店とガントの世話をしている。

 アニータは美人というより、クリッとした大きな目の可愛い小柄な女性だ。


 そしてアッシュはガントに頼まれて、バートに剣術を教えている。

 二人の両親は、アルタニアを占拠したエグモント兵によって殺された。

 その時、何も出来なかった自分が悔しかったので、剣術を習いたいと言い出したそうだ。





 その角を曲がればガントの店という時、前からカモメが飛んできて、アッシュの頭の上に止まった。


「やあ、トトント」


 トトントはアニータと契約している。 すぐ後ろからいっぱいに詰め込まれている買い物籠を持ったアニータがついてきていて、小走りでアッシュに駆け寄り、ニッコリと微笑んだ。


「こんにちは」

「こんにちは、持ちます」


 アッシュは手に持っていた剣をアニータに持ってもらって、代わりに買い物籠を持ってあげた。

 


 アッシュ、なぜか顔が赤い。




「トトントがいつもすみません」

「慣れていますから」


 トトントはアニータと契約する前は、いつもアッシュの頭の上に止まっていた。




 アッシュ、一段と顔が赤い。




 鍛冶屋に入るとガントが手持ち無沙汰に店番をしている。

 アッシュはアニータと一緒に店に入り、こんにちはと頭を下げてからアニータに持ってもらっていた剣をガントに渡してもらった。



「ガントさん、またその剣の()ぎをお願いします」

「······お二人、おそろいで······」



 アッシュ、更にボッと顔が赤くなった。



 婚約までして、いい加減慣れろ。



「一緒に食事を」と言われて遠慮なく承諾し、慣れた様子でテーブルに着いた。



 ◇◇◇◇



 バート以外に[ジェイク]と[ヨング]という弟子がいる。

 全員で食事をしていると、ヨングが思い出したように乗り出した。


「そうだアッシュさん! ドラゴンを見たんです!」

「またその話か。 ドラゴンなんているはずないだろう?」

「いや、ドラゴンは架空の生き物ではないそうだ」


 ジェイクがたしなめたが、そう言うアッシュの言葉に、全員が「えっ?」と顔を上げた。


「カイル様がおっしゃるには、ドラゴンは特殊なユニオンビーストでドラグルというらしい。 ただ、既に絶滅したと(おっしゃ)っていたのだが·····ヨング、どこで見た?」


「東の大きな教会の屋根の上から下を通る人を見ていました」

「本当にいたのか·····」


 アッシュが考え込んでいると、アニータが考えあぐねた末に口を開いた。


「あのぉ····実は、私も見ました······二度」

「二度も? どこで?」

「初めは隣町に行った時に······北側に大きな木があるのをご存知ですか?」

「はい。 かなりの巨木がありますね」

「遠目ですが、その木にドラゴンのようなのが止まっているように見えたのですが、見間違いかと思っていました。 でも、今朝家を出てすぐ、緑色の大きなドラゴンが東に飛んで行くのを確かに見ました」


「僕が見たのも緑色だった! やっぱりいたんだ!」

「お前は黙っていろ!」


 ジェイクはヨングの頭をコツンと叩いた。


「そうか·······ただ、ドラグルは凶暴な種族と聞いている。 もしまた見ても近付かないように」


 アッシュはまた考え込んだ。


《ディアボロさん。 この事をカイル様に報告してしてもらえませんか?

 私はバートの練習があるので直ぐには帰れませんが、早めに報告する必要があると思います》

《分かった》


 ディアボロはのっそりと立ち上がり、そのまま出ていった。


「あれ、ディアボロさんが出て行きましたよ?」

「あぁ、気にしなくてもいい。 それよりバート、そろそろ行こうか」

「はい!」



  ◇◇◇◇◇◇◇



 アッシュとバートは、いつも直ぐ裏の空き地で練習している。

 なかなか筋が良く上達が早い。


 そろそろ剣をプレゼントしてあげるつもりでいる。



「そこはもう一歩内側に踏み込め。 そうして脇を絞める。 こうだ」


 アッシュがやって見せる。


「もう一度やってみろ」


 バートが木刀を握り直し、振り下ろした。


「そうだ。 そうすれば次の攻撃に移りやすくなる。 もう一度いくぞ」



 そこへ空から一羽の鷲が舞い降り、地面に着く前にいつものディアボロの姿に転身した。

 それに気づいたアッシュは「ちょっと休憩しよう」と言って、ディアボロに駆け寄った。



「どうでした?」

《直ぐに調査させるということだ》

「そうですか」

《実は俺もだが、ユニオンは皆、数日前から今までにない大きな気配を時々感じていた。 多分そいつなのだろう》

「そうですか······とにかくありがとうございました」





 アッシュは練習を再開した。



 広場の隅で寝ていたディアボロが急に顔を上げ、どこかをじっと見ていたが、急に立ち上がると「ガルッ!」と、吠えた。

 アッシュが振り返るとディアボロは既に転身していた。


挿絵(By みてみん)


《乗れ!》


 驚くバートに「待っていてくれ」とだけいうと、アッシュはディアボロに飛び乗る。


「ディアボロさん、どうしたのですか?」

《あの気配だ》

「ドラゴンの?」

《いたっ! 奴だ!》


 直ぐ先の教会の屋根の上に何かが降り立ったが、こちらが向かっている事に気付いたのか、慌てて飛び去った


 ディアボロは後を追ったが、それはあっという間に東の山の向こうに消えた。


《クソッ!、速い》


 ディアボロは諦めてスピードを緩めた。


「確かにドラゴンでしたね。 いや、ドラグルか······とにかく戻りましょう」



 ◇◇◇◇



 その日の練習は早めに切り上げ、アッシュは城に戻って直ぐにカイルの元へ急いだ。



「カイル様、ドラグルを見ました」

「ドラグルを? 本当にいたのだな」

「話を聞こうと近付いたのですが、こちらに気付くと逃げて行きました」

「逃げたのか?」


「はい」



 ◇◇◇◇




 その日からドラグルの目撃情報が続々と報告されるようになった。


 近隣の町や村にもドラグルは現れ、いつも暫く様子をうかがった後、何もせずに飛んでいくという事だった。




 ドラグルはアルタニア国だけでなく、他国にも姿を見せているという情報が入った。


 アルタニアに現れたのは六つ目のドラグルだが、他国に現れたのは五つ目で、持ち込まれた情報を総合すると、どうやら全部で六頭いるようだった。









アッシュとアニータの恋のお話しは、いつか、番外編で·····

( ´∀` )b

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