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ユニオンビースト ~霊獣と共に生きる者達~  作者: 杏子
第二章 レジェンド・オブ・レジェンド
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2話 ドラゴン

トムの農場で充実した10日間を過ごしたカイル達。

城に戻ると、包み紙が置いてあり········

 2話 ドラゴン




 カイル達はトムの農場に着いた。


 トムと契約するセリーヌが教えたのか、既にみんなが家の前で待っていた。


「カイル、結婚おめでとう!」

「ありがとうございます」

「結婚式に招いてもらったのに、行けなくてすまなかった」


 戴冠式には来てくれたのだが、居心地が悪かったようで、帰るころにはげっそりしていた。

 なので今回は無理しないようにお願いしたのだ。



「みなさん、紹介します」


 カイルはエリアスを引き寄せた。


「エリアスと、エリアスと契約しているルーアンです。

 エリアス、トムさんとサラさん。 そして息子のニックだ」



 ニックはもう十五歳になる。 まだあどけなさが残るが、既にトムの身長を抜いている。

 日に焼けて真っ黒で、優しさがにじみ出るような笑顔を見せる。




「お話はいつも聞いています。 今日からお世話になります。 よろしくおねがいします」

「こちらこそ、お会いできて光栄ですエリアス様。 ご結婚おめでとうございます」

「ありがとうございます······あのう······エリアスと呼んで下さい。 敬語も止めていただけると嬉しいのですけど······」


 トムとサラは苦笑した。


「じゃあ······エリアスさん、よろしく」



 この婿にしてこの嫁あり。



「近衛隊長さんも大変だね。 気まぐれな王様のせいで、畑仕事をしないといけないのだから」

「いいえ······私も楽しいですから。 城勤めよりよっぽど楽しいです」


 アッシュは少し声を落として言った。





 カイル達が家に入ると、いつもより豪勢な食事が並んでいた。


「わぉ! サラさん、豪勢ですね!」

「お祝いをしようと思ってね。 さぁ、荷物を部屋に置いて着替えておいで」


 何だかサラ達はニヤニヤしている。



「わぉ!!」


 カイルは部屋のドアを開けて驚いた。

 いつもの小さなベッドの代わりに、二人がゆっくり寝れる程の大きなベッドが置いてあったからである。

 綺麗な花まで飾ってあった。


「カイルが嫁さんを連れてくるだろうから、結婚祝いと誕生日のお祝いも兼ねて、父さんとニックが作ったんだよ。 ちなみに布団は私からだ。 気に入ってもらえたかい?」

「もちろんです!」


 いつもながら心のこもったプレゼントに心打たれる。

 楽しい10日間になりそうだ。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 翌日からカイル達は忙しく働いた。


 エリアスはサラに料理を習うんだと張り切っていて、暇な時には掃除や畑仕事に厩舎の仕事までも手伝った。


 カイルはここにいると(わずら)わしい国務を忘れていられる。

 たまに急ぎの決済書類を持ったユニオンビーストがカイルの元に飛んでくるが、それ位は我慢しないと。




 そろそろ昼食の時間だという時、エリアスがサラと何か荷物を持って畑に来た。

 どうやらお弁当を持ってきたようだ。


「みんなと一緒にお昼を食べようと思って、サラさんにお願いしたの」


 

 広げられたお弁当の周りにみんなが座り、その周りにユニオン達が寝そべる。


「外で食べるのもいいですね」


 アッシュがディアボロの頭を撫でながら言った。

 エリアスもルーアンの頭を撫でながら、とても嬉しそうだった。



   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 その日の夕方、近隣住民がそれぞれ食材を持って集まってきた。 毎年恒例になっているカイルの歓迎会で、バーべキューパーティーをするためである。


 カイルがここで暮らしている間に親しくなり、国王になってからも今までと変わらない態度で接してくれるのが、とても心地よかった。



 準備の最中もみんなの興味はエリアスだった。


「カイルのどこが良かったんだい?」

「優しくしてくれているかい?」

「プロポーズは何と言われたんだい?」


 エリアスは女性陣から質問攻めにあっている。


 一方男性陣も

「綺麗な人だね」

「新婚生活はどうだ?」

「ちゃんと優しくしてやっているだろうね」

と、盛り上がっていた。




 日が落ち、イザクが篝籠(かがりかご)と釜戸に火を入れ、沢山の肉や野菜などか準備された。 いつもの事なので大体の役割分担も決まっていて、次々にテーブルの上に出来上がった料理や飲み物が並べられていく。



 準備が整い、全員がテーブルの周りに集まった。



「カイル君! エリアスさん! 結婚おめでとう! これは私達からのお祝いだ」


 テーブルの上に用意された物の上にかかってている布を取った。

 それは子豚の丸焼きだった。


「豚は子供を沢山産むから、我々庶民の結婚式には欠かせない物なんだよ。 子供が沢山出来るようにいっぱい食べておくれ」

「「ありがとうございます」」

「こんな事しか出来なくって悪いね」

「とんでもないです。嬉しいです!」



 男性陣が交代で肉や野菜を焼き、女性陣はエリアスとの話が尽きず、大盛り上がりだった。



  ◇◇◇◇◇◇◇◇



 あっという間に楽しかった十日間が過ぎ、カイル達はアルタニアに戻った。

 城に着くと、テーブルの上に大きなリボンで飾られたプレゼントが置いてある。


「カイル様が以前から欲しがっておられた本でございます。 やっと見つける事が出来ました。

 ささやかでございますが、私からの贈り物でございます」


 一緒に入って来たタントゥールが口の端で笑いながら伝えた。



 そういえば、タントゥールが笑う所を見たことないなと思いながら包み紙を開けた。



「わぉ!! [レジェンド・オブ・レジェンド]だ!」


 (いにしえ)の伝説が書かれた分厚い本だった。

 噂を聞いてずっと探していたのだが、なかなか手に入いらなかったのだ。



「タントゥール、嬉しいよ。 ありがとう!」


 ちょっと嬉しそうなタントゥールは、それでは······と、出ていった。



  ◇◇◇◇◇◇◇◇



 エリアスはトムの所から何種類かの野菜の苗を貰ってきて、テラスに菜園を作って野菜の栽培を始めている。


 カイルは時間のある時には一緒にテラスに出て、エリアスが菜園の手入れをする横で、父がよく座っていたロッキングチェアに座り、レジェンド・オブ・レジェンドを読むのが日課になっていた。


 【レジェンド・オブドラゴン】と書かれたページには、ドラゴンの挿絵と共にドラゴンについての記述があった。


「エリアス見てみろよ。 ドラゴンについて書いてある」

「まぁ、なんて?」


 エリアスは菜園をいじる手を休め、エプロンで手を拭きながらカイルの元に来た。


「ほら、ここの記述」


 カイルが指さす個所にはこう記されている。



【ドラゴンの皮膚は硬く、何をもってしても貫けず、ドラゴンの牙は全ての物を貫く。 故にドラゴンはドラゴンのみが死を賜る。


 ドラゴンは地獄の炎を司る神

 ドラゴンは全ての死を司る神

 ドラゴンは復活の神



 ドラゴンの鱗は生命の具現

 ドラゴンの牙は死の具現


 鱗を持てば災いが逃げ去り、牙を持てば死が近寄るに能わず】




「······待ってカイル【鱗を持てば災いが逃げ去り】って、傷が治るって事じゃない?」

「もしかして癒しの盾の事かな? それなら【死が近寄るに能わず】って、護りの剣の事みたいだ」

「まあ! 本当だわ」

『何をしているの?』


 そこへナルナラが寄ってきた。


『あら、これって······』


 ナルナラは挿絵を見て驚いている。


「ドラゴンを知っているのか?」

『ドラゴンって何?』

「この絵はドラゴンだよ」

『このユニオンは、ドラゴンっていうのね」


「ユニオン?」


『そうじゃないの? 体はトカゲ、翼はコウモリ、前足は猛禽類みたいね。 火を噴いているから炎もあるのかしら?」

「そうか、そう言われればユニオンだ。 カイザーなら何か知っているかもしれない。 カイザー!」

『カイザー様は、熊公さんの所よ』

「そうか······」《アルナス、ハスラン、来てくれ》


 奥で寝ていた二頭がのっそりと出てきた。


「この絵を見てくれ」

『変わったユニオンだな』

『私も初めて見る』


 その時白い鷲が飛んできて、白いライオンに転身した。


『呼んだか?』

「この絵を見てくれ。 ドラゴンというのだが······」


 カイザーは挿絵をじっと見つめた。


「···トカゲ······コウモリ······鷲······炎······それと······あぁ、ワニだ。

 この種族は我々と違い、皆が殆ど同じ姿をしている。

 ドラゴンではなく······ドラ······そうだ、[ドラグル]だ』

「ドラグル······カイザーは会ったことがあるのか?」


『いや、無い。 どこか遠くの島に棲むらしいのだが、ドラグルはその島から出られないと聞いた』

「飛べるのだろう?なぜ出られないのだ?」

『それは知らない······ただドラグルは凶暴な種族で、仲間同士でも平気で殺し合うらしい。 それで絶滅したと聞いている』


「それで伝説だけが残ったのか。 鱗や牙について何か聞いていないか?」

『鱗と牙?』

「もしかしたら癒しの盾や護りの剣がドラグルの物ではないかと思って」

『よくは知らないが、昔は不思議な術を使う者が多くいた』


 ルーアンに通訳してもらっていたエリアスがパッと顔を上げた。


「それって魔法使いとかじゃないの?」

「そうだな。 もしかしたら、この剣や盾は魔法使いが作った物かもしれないな」



 その時ノックがあり、アッシュが入って来た。


「カイル様、会議のお時間です」

「分かった」



 カイルはレジェンド・オブ・レジェンドを棚に戻して部屋を出ていった。






ドラゴンはドラグルというユニオンビーストだったのね

(゜_゜;)

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[気になる点] 「いつもいつも」というのはわざとですか?念をおしている表現ですか? あと、三点リーダーは以前に指摘した通りです。一般的なやり方にならうと修正したようになります。 [一言] ご自分のや…
2020/09/22 21:00 退会済み
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