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ユニオンビースト ~霊獣と共に生きる者達~  作者: 杏子
第一章 ユニオンビースト
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42話 懐かしい故郷

ユニオンビーストが各国に入り、人間と共にいる光景を目にしたカイルは感激する。

 42話 懐かしい故郷




 カイルがシドネッタ国に入った時には、既に多くのユニオンビースト達が国内に入っていた。


 この国でも思った以上に人間とユニオンビースト達が、すんなりとお互いを受け入れているのを見て安堵し、嬉しかった。



  ◇◇◇◇◇◇



 ある日、避難民代表をしているローゼンがカイルの元に来た。

 彼の後ろには、立ち上がれば3m近くありそうな大きなゴリラがいた。


「カイル様、紹介します[グーリ]です」


 ローゼンはとても嬉しそうで、少し得意げな顔で紹介した。


「契約したのですか?」

「はい! 今朝方(けさがた)に」

『カイザー、久しぶりだな』


 グーリが声をかけてきた。


「カイザー、知り合い?」

『ティーリオの森の王だ』

「では、五つ目?」


 カイザーは頷いた。

 

「この国は私達が居るから大丈夫です。 カイル様は他の国にも顔を出してあげて下さい。 きっと士気が上がります」

『カイル。 そうさせてもらおう』




 カイル達は、シドネッタ国をローゼン達に任せて他の国を廻る事にした。



  ◇◇◇◇◇◇




 先ずはアッシュがいるシドラス国に入った。




 カイルの事はシドラス国でも有名で、熱烈な歓迎を受けた。


 カイザーはライオンの姿でカイルの横を歩いている。

 と言うのも、シドネッタ国でもそうだったが、ここシドラスでも既にあちらこちらで当たり前の様にユニオンビーストがいて、動物の姿の者もいれば、転身した本来の姿のままでも人と楽しそうに話をしながら歩いているユニオンもいるからである。



「カイザー、夢のようだ。 人とユニオンビーストが共にいる」

『これはグラントの夢でもあった。 いや······歴代アルタニア王の夢だった。 しかし誰も実現する事は出来なかった。 それをカイルが成し遂げたのだ』

「うん」


『しかし、これからが正念場だ』

「分かっている······もし失敗したら、多くの犠牲が出る」

『心して挑まなければ』


「·········」


 カイルはグッと手を握りしめた。




 ◇◇◇◇




「カイル様!」


 後ろで声がしたので振り返ると、アッシュとディアボロがこちらに走って来る。

 カイルはアッシュを見て、プッと吹き出した。


「カイル様がいらしたと聞いて······」

「アッシュさん、その頭の上は?」 


 アッシュの頭の上にカモメが止まっているのだ。


「契約したのですか?」

「いいえ···そうでは無いのですが······」

『そいつの名はトトント。 お前の胸に傷を付けた奴だ』

『あの時はごめんなさい』

「君のせいじゃないから気にするな」


『こいつ、やけに俺に懐いて付いてまわるから、アッシュの頭の上にでも止まっていろと言ってやった』

「せめてハリスのように肩にしてくれと、頼むのですが······」

『クックックッ、こっちの方が面白いだろ? トトント降りるなよ』

『はいっ!』


 みんなで笑い、アッシュは苦笑しながら頭をポリポリと掻いた。




 その後、アッシュと共にシドネッタ国王に会い、アルタニア避難民とも再会し、鉄の網造りを見てまわって改良点等を話し合った。



  ◇◇◇◇◇◇◇◇   



 ボルスマ国でも同じような光景が見られた。


 ハスランも近くの森の五つ目に(おとり)役を任せる事にして、カイルと行動を共にする事になった。

 ここでも同じように色々回った後、カイルの第二の故郷であるクレモリス国に入った。



  ◇◇◇◇◇◇◇◇



 先ずはトムの家に向かった。


 懐かしさが込み上げてくる。




 心の奥に不安を押し込めて仕事やトマスとの訓練に明け暮れ、本当の家族の様に接してくれるトム達との穏やかな日々が遠い昔のように思われた。




 畑の中にトムとニックを見つけた。


「トムさん! ニック!」


 その声で顔を上げた二人は満面の笑みでこちらに走ってきた。


「カイル。 元気だったか?」

「はいっ! トムさん達もお変わりなく?」

「もちろんだ。 あっ、少し変わったかな? 家族が増えた。 ちょっと待ってくれ」


 直ぐに家の裏から一頭の綺麗な鹿が走ってきた。


「紹介しよう。 新しい家族の[セリーヌ]だ」

「わぉ! 契約したのですね?」

『あなたがカイルさんですね。 お話は聞いています』


 その時ニックがカイルの服をクイクイと引っ張る。


「ねえ、カイル兄さん。 あれって······カイザー?」


 畑の外に座ってこちらを見ている白いライオンを見て言った。


「よく知っているな」

「だってカイル兄さんは有名だからみんな知ってるよ。 みんなもやっぱり不安だったんだ。 アルタニアの次はこの国かもって。 だからカイル兄さんが救ってくれるって、みんなが感謝しているよ」

「······まだ、何もしていないよ······」

「でもカイル兄さんなら、きっとやり遂げてくれると信じているよ」


 ニックは無邪気に目をキラキラさせながら見上げてきた。


「······ありがとう、最善を尽くすよ。 そうだサラさんは家?」

「うん」


 カイルが行きかけると、トムが呼び止めた。


「今夜は泊まっていけるのか?」

「いいえ。 今日は無理ですが、2~3日後にもう一度寄ります。 その時にお願いします」

「そうか······忙しい身だからな。 待っているぞ」


「······はい······」



 アルナスはカイルを見上げた。





 家に入り、キッチンを覗くとサラが昼食の準備をしていた。


「サラさん」


 声をかけると驚いて振り返り、目を見張った。 そして、両手を広げてカイルに駆け寄り抱きついた。


「カイルじゃないか! また一段と(たくま)しくなって! よく来たね! ゆっくりしていけるのかい?」

「いいえ、今日は······」

「そうかい、残念だね。 そうだ! 今日はカイルの好きなキノコのミルクスープだよ。 それだけでも食べておいき」

「いただきます」


 カイルはいつも座っていた席に座った。 それはつい昨日の事のようで、各国を回って国王やユニオンたちに会ってきたことが嘘のように思えてきた。


「そうだ、父さんには会ったかい?」

「はい」

「じゃあ、セリーヌを紹介されただろう」

「綺麗な鹿ですね」

「セリーヌと契約した時、涙を流して喜んでいたよ。 これもカイルのお陰だって。 早くカイルに紹介したいって。

 あ、カイルお代りは?」

「では、もう一杯お願いします」



 カイルは懐かしい味を十分に堪能してから「また······」と言って王都に向かった。





やっぱりアッシュは、いじられキャラです。

可愛い!

(⌒‐⌒)

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