41話 奪還作戦
カイルの考えた奪還作戦で、各国と、ユニオンビースト達が動き始める。
41話 奪還作戦
『カイル様、これを』
「ありがとう。 ご苦労だった」
カイルのケガが落ち着いたので、ハリスがタントゥールからの手紙を渡した。
[貴方様が御無事と知り、神に感謝致しております。
私共は彼の命令に従ってさえいれば危害を加えられる事もなく、皆元気にしております。
多くの兵士が地下に幽閉されておりますが、彼に従う振りをしていた兵士はこっそり城を抜け出して街中に潜んでおります。
その数およそ二百名。 元々街中にいた兵士が約五千名。
現在城の中にいるエグモント兵は三十名足らず。
街中にいる三千名程の兵は交代でユニオンビーストと国中の見回りをしております。 しかしエグモント兵は皆が怠慢で、夜間はユニオンだけで見回っていると聞いています。
彼の横には五つ目が一頭、四つ目が二頭、いつも側にいます。
他のユニオンビーストの数ですが、彼が「二百もいれば国を落とすのは簡単だ。 しかし念のためにもう少し集めようとしたのだが、あと五十集めた所で何故か俺の術が効かなくなった」と悔しそうに言っていましたので、どうやらきっちり二百五十かと思われます。
彼は毎日のように昼頃から宴を開き、暗くなる頃には泥酔して部屋に運ばれております。
そろそろ国庫が底をつきそうですが、もう半年位は何とかもたせる事が出来ると財相が言っておりました。
私共の事はご心配に及びません。
決して無理をなさらないようにご自愛下さい。
追伸
王妃様は自室で軟禁状態ではありますが、お元気にしていらっしゃいます]
「カイル! 叔母様は生きていらっしゃるのね。 良かったわ!」
「あちらの状況もこれで分かった。 これなら行ける!」
◇◇◇◇
早々に会議が開かれ、カイルの案に全員が賛同した。
直ぐにカイルの名で各国に協力を求める使者が送られた。
また近くの森から飛べるユニオンが集められ、各地のユニオンの森へ連絡が取られた。
そしてアルナス達も手紙を持ち、各国のアルタニア避難民の元に向かった。
◇◇◇◇
カイルの作戦とはこうだ。
基本はアルナスとディアボロがしたのと同じ方法だ。
S級ユニオンで誘き寄せる。
そして待ち構えている四つ目以下のユニオンに大きな網を持たせ、それで捕らえて国境の外に引きずり出す。 四ツ目以下のユニオンは、操られているユニオンたちの攻撃を受ける事がないので、網を持っていても警戒されることもないのだ。
一頭づつしか捕らえられないが、アルタニア周辺国の何ヵ所かで一斉に行えば、20~30頭で済む。
網は食いちぎられないように鉄の鎖で作り、各国でそれぞれ出来るだけ多く作るように要請した。
アルタニア周辺国で四方から一斉に行い、夜の間に素早く終わらせる必要がある。
ユニオンビーストさえ居なくなればエグモント兵は問題なく投降するだろう。
ユニオンビーストとの通訳と、囮役のユニオンが必要という事でカイル達が各国に向かった。
ここオスウエスト国はエリアスとルーアンに任せ、ボーグに指揮を取ってもらう。
囮役のS級ユニオンがいないが、この近くの森に五つ目がいるので、そのユニオンに囮役になってもらう事になっている。
ボルスマ国はウォルターとアネスとハスラン。
シドラス国はアッシュとディアボロとカイザー。
シドネッタ国はカイルとアルナス。
クレモリス国はトマスと熊公ことトゥガルドが、既に契約していたので彼らに任せた。
決行日は三ヶ月後。
振り分けられた国にユニオンビーストが少しずつ入って来た。
各国にユニオンビーストが入って来るという御触れを出していたという事もあるが、シドネッタ国と共にクレモリス国も協力し、また各国のアルタニア避難民によって、ユニオンビーストは恐れる必要の無い種族である事が少しずつ浸透していた為、大きな混乱は無かった。
それぞれの国で大急ぎで鉄製の網を作り、出来上がった網でユニオンビースト達が捕獲のシミュレーションをしながら大きさや形等を相談し、改良しながら作業を進めた。
一ヶ月もすると、ユニオンビーストと契約する者が、何人も現れた。
ちょっとまどろっこしい作戦だけど、ユニオンを傷付けずに術を解くには······
( ´Д`)=3




