40話 回復
大怪我をしたカイル。
みんなは心配で仕方がないのだが······
40話 回復
夜遅くに城に到着した。
既に寝静まっているはずの時間にも関わらず、城には煌々と明かりが灯され、カイルの部屋のテラスには数人の人影があった。
ナルナラとイザク、そしてエリアスとウォルターが駆け寄り、後ろから医師が二名続いた。
「カイル! カイル!!」
「······大丈夫···だ。 アッシュさん······癒しの盾を······」
ウォルターが入れ替わりにカイルを抱き抱えてベッドまで運ぶ。
アッシュは急いで癒しの盾を持って来てカイルの腕にはめ、医師に説明して決して腕から外さないようにと念押しした。
「先生! 大丈夫ですか?! 先生!」
エリアスが悲鳴のような声で聞き続け、ナルナラ達も騒ぐ。
医師には動物たちがキーキーと鳴いているようにしか聞こえない。
「治療の邪魔です!」
部屋から追い出された。
廊下で呆然としているエリアスに、ハリスは口にくわえたペンダントを差し出した。
「ハリス······ありがとう」
エリアスはペンダントを胸に抱き締めた。
その時、カイルがいる部屋の中から「ガチャン!」とガラスが割れる音がした。
どうしたのかと覗こうとしたらドアが開き、中から白鷺が放り出された。
ハスランが帰った来たのである。
『何があった!! アルナス!!』
怒鳴ってアルナスを見ると、小さくなり······文字通り小さな仔狼になり、部屋の隅で震えていた。
『······アルナス······』
エリアスがアルナスを抱き上げ「大丈夫······大丈夫だから」と、優しく抱き締めた。
アルナスに聞くのを諦め、ハスランが振り返り怒鳴った。
『ナルナラ! イザク! ハリス!何があった!!』
「お静かに!」
ドアが開いて医師に怒られた。
ディアボロが説明しようと思ったら、再びカイルの部屋のガラスがガチャンと割れた音がした。
そして、直ぐに白大鷲が放り出された。
カイザーがライオンの姿に転身し、『何があった!!』と、言い終わる前に再びドアが開いた。
「お·し·ず·か·に!!」
また怒られた。
暫くして、医師が出てきた。
「治療が終わりました。 今は薬で眠っておられます。 血を多く失われましたので、少し心配ではありますが、命には別状ごさいませんのでご安心を。
中に入ってもよろしいですが、決して騒がないように!
いいですね!!」
念を押された。
「エリアス様。 少し熱がおありですので、カイル様の頭の濡れタオルをお願い致します。 王様には私から容態を説明致しておきます」
医師はシュンとしたユニオン達を睨み付け、戻って行った。
全員がぞろぞろと部屋に入り、エリアスがアルナスを抱いたままカイルの枕元に座った。
ナルナラとイザクが、僅かに震えるカイルの布団の中に潜り込んで暖める。
誰も言葉を発する者はいない。
カイルの寝息とエリアスがタオルを濡らす時の水音だけが、やけに大きく部屋に響きわたる。
ダンバートとエリモアが一度様子を見に来たが、何も言わずに出ていった。
その後、カイザーとハスランが割ったガラスを侍従が片付けに入り、入れ違いに職人がガラス戸の修理に来た。
みんなはそれを黙って見ていた。
◇◇◇◇
窓の外が白みかけた頃、医師が入って来た。 エリアスは慌てて場所を譲り、ソファーに座った。
ガーゼを取り替えようとした医師が「おおっ!」と声をあげた。
「先生! どうしたのですか?!」
エリアスが駆け寄り、全員が立ち上がる。
「エリアス様、御覧下さい。 もう殆ど傷が塞がっております。 もう大丈夫でございます。
もうそろそろお薬が切れる頃ですので、そのうちお目覚めになると思います」
医師は何もせずに出ていった。
緊張していた空気が、一気に和らぐ。
エリアスはアルナスの頭を優しく撫でた。
「もう大丈夫だって。 良かったわね」
アルナスはエリアスの顔を見上げてから膝から降り、元の姿に戻った。
《カイル······すまなかった》
アルナスはカイルの枕元に頭を乗せた。 すると、ゆっくり布団の中から手が出てきて、アルナスの頭を撫でた。
「心配かけたみたいだね」
「カイル!!」
エリアスが抱きつき、みんなが駆け寄った。
「みんな、ごめん。 もう大丈夫だから」
『カイル。 すまない、私のせいで······』
「アルナスは悪くない。 余所見していた私が悪かったんだ」
『カイル。 こいつ、カイルが死んじゃう~~って、仔狼になってエリアスに抱かれてたんだぜ』
「本当?」
ルーアンに通訳してもらっていたエリアスが、困ったような顔をして、頷いた。
『ディアボロ! 今度言ったら殺す!!』
『ハハハ』「ハハハ」
エリアスがカイルにペンダントを差し出した。
「これ······ハリスが持ってきてくれたの。 今度は効かなかったわね」
「いや、これのお陰でこの程度で済んだんだ。 ありがとう」
『治ったから良かったが、私かダンバートに相談しろと言っただろう』
カイザーの声は怒っているのが分かった。
「すまない。 アルナスにも相談しろといわれたが······私の悪い癖だ」
『分かっているならいい』
「そうだ、カイザー。 話は聞いたか?」
『ああ。 国境を越えさせれば術が解けるのは分かったが、アルナスとディアボロでさえ一頭引きずり出すのに苦労したのに、あれだけの数ではかなり困難だぞ』
「一網打尽とはいかないが、もう少しやり易い方法を思いついた。」
カイルが作戦を話した。
「それなら楽に行けそうです。 各地から一斉に行えば······カイル様、早速会議の召集をお願いしましょう」
「私が行きます」
ウォルターが走って行った。
癒しの盾は流石です。
カイルの考えた作戦とは······?
( -_・)?




