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ユニオンビースト ~霊獣と共に生きる者達~  作者: 杏子
第一章 ユニオンビースト
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31話 ウォルターとアネス

ユニオンビーストにケガを負わされたウォルターを治療し、遅れる事をディアボロに伝えにハリスを向かわせるが······

 31話 ウォルターとアネス




 直ぐにアッシュがウォルターの手当てを始めたが、パックリ開いた傷口からは滝のように血が流れ出ている。


「ハリス、この辺りに綺麗な水がないか探してくれ」


 ハリスは飛び上がり、直ぐに降りてきた。


『この直ぐ先に(さわ)があります』


 カイルは沢まで行ってタオルを濡らしてきた。

 ウォルターの服を破り、濡らしたタオルで汚れを拭き、傷口を押さえた。

 アッシュが薬草を塗るが、血が薬草を流してしまう。


「カイル様、ダメです! 血が止まりません!」


 アッシュが叫ぶように、訴える。




『カイル様、傷口を焼きます』


 イザクだ。


「傷口を?」

『傷口を焼いて止血します』

「アッシュさん。 イザクが傷口を焼いて止血すると言っています」

「焼くのですか······しかし、それしか方法はないですね。 ウォルター、構わないか?」


 ウォルターは小さく頷いた。




『しっかり押さえて下さい。 動くと苦痛が増します』

「わかった。 ウォルターさん、動かないで下さいよ」

「ウォルター、これをくわえていろ」


 アッシュはウォルターにタオルを噛ませた。 そしてカイルとアッシュが、ガッチリと押さえた。


『始めます』


 イザクがウォルターの上に乗り、口から炎を出して傷口を焼き始めた。


「うおおお~~っ!」


 ウォルターが痛みで悶える。


「ヴヴッ!!」


 イザクは微妙に炎の大きさを調整しながら、傷口を焼いていく。

 イザクの炎が通りすぎた所から、傷が塞がっていく。


「ヴ~~ッ······ヴヴ······」

「後少しだ! 耐えろ!」


 その時、ウォルターの力が突然抜けた。

 気を失ったのである。


 可哀そうだがこの方が苦しまずに済む。 イザクは急いで手当を終わらせた。


『終わりました』


 イザクがウォルターの背中から降りた。

 傷口が塞がり、血は止まっている。




 カイルは再びタオルを濡らしてきて傷口を冷やし、アッシュが薬草を塗った。


「カイル様、この様子では暫く動かす事ができません。 どうしましょう」

「とにかく、ディアボロに知らせておきます。 ハリス、ディアボロに少し遅れる事と、ナイフは手に入った事を伝えてきてくれ」

『わかりました』


 ハリスは飛んで行った。



 火を焚き、ウォルターを暖めるが、多くの血が失われた為か震えが止まらない。 カイザーがピッタリ寄り添い、イザクとナルナラもウォルターを暖めた。


 カイルとアッシュも、抜け道で仮眠を取った以外ろくに休んでない。

 

 携帯食を口に入れ、横になった。



 ◇◇◇◇



 気付くと朝だった。


 アッシュはハスランに乗り、休ませてくれる民家を探しに行った。

 ウォルターの呼吸は随分楽そうになっていたが、震えは止まっていない。



「うう~~ん」


 ウォルターの意識が戻ったようだ。 


「大丈夫ですか?」

「······申し訳······ありません」

「謝る必要はありません。 今アッシュさんが、休ませてくれる家を探しに行っています」

「······戻らないと」

「大丈夫です。 落ち着いたら私が行きます」


「······アネスが······」 

「ハリスに遅れる事を伝えに行ってもらいましたから、心配ないですよ」

「でも······」

  

 カイルはため息をついた。


 自分の事よりアネスをそんなに心配するウォルターが、少し憐れだ。



「本当に心配ありません······アネスは······ユニオンビーストですから。 ディアボロも仲間を傷つける事はしないので、安心してください」

「?······彼女が?」

「ですから、今は何も考えずに休んで下さい」



 ◇◇◇◇



 昼過ぎ、アッシュがハスランに荷車を着け、中に布団まで敷いて戻って来た。


「暫く離れを貸してもらえる家が見つかりました」



 カイルとアッシュがそっとウォルターを荷車に乗せた時、ハリスが戻って来た。


『カイル様。 話しはついたのですが······アネスが来ました』


 ハリスは後ろを見て『あっ、先導してきます』と、慌ただしく戻って行った。


「ウォルターさん、アネスが来たそうです」

「えっ?」


 ハリスが森の中から飛び出して来た。


 するとその後ろから、巻いた大きな角を持った羊の頭に体が馬で、チーターの長い尾を持ったオレンジ色の瞳の三目のユニオンが、凄い勢いで走って来た。


挿絵(By みてみん)

「アネス······か······?」


 ウォルターは手を伸ばそうとしたが、手が上がらない。 アネスは馬の姿に転身し、ウォルターの手の中に鼻を差し出した。


「アネス······来て······くれたのか?」

 

 アネスはウォルターの口を舐めた。


《貴方と、契約します》


 アネスの声が頭の中に流れ込んできた。


「お前の···声か?······」

《はい。 これからはずっと貴方と共にいます》


 ウォルターはアネスをじっと見つめ、フッと笑った。

 

「ずっと言いたかったんだ······助けてくれてありがとう」

《フフフ その言葉は、何度も聞いたわ》

「そうか。 人間の言葉は分かるんだったな」

《そうよ。 これからは聞くだけじゃなく話せるの。 声に出さなくても話せるのよ。 頭の中で話してみて》

《聞こえているか?》

《もちろんよ》

《凄いな》


 ウォルターはアネスを見つめて微笑んだ。




 ウォルター······話す文字数がちょっと多い。





「お楽しみの所申し訳ないが、日が暮れる迄にあちらに着きたいのでもういいか?」

「すみません隊長」




 ハスランが引く荷車の横に、アネスはピッタリ付いて歩いた。

 どうやらウォルターとずっと話をしているようで、時折笑い声が聞こえた。


 カイルが見かねて注意する。


「ウォルターは重症なんだ。 休ませてあげてくれないか?」

《ごめんなさいウォルター。 私はここにいるから、休んで》


 ウォルターはコックリと頷き、目を閉じた。




『まるで恋人同士だな』



 アルナスがカイルにボソッと言った。








普段は、一言しか話さないウォルターが、アネスとだけは、普通の人みたいに話してる。


話せるんだ······

( ゜ε゜;)

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