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ユニオンビースト ~霊獣と共に生きる者達~  作者: 杏子
第一章 ユニオンビースト
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27話 新しい仲間

カイルとアッシュの二人旅、いや、ユニオンビースト6頭、馬2頭の旅が始まった。


そこで出会った人は······

 27話 新しい仲間




 午後からは街の宿屋にいるアッシュの所にいた。



 既に殆どの準備は終えてあり、古着ですみませんと言いながら旅用の服まで準備してくれていた。


 ハスランは鞍を着けないので荷が積めない。 その為、荷運び用の馬も用意していた。


 アッシュは愛馬[ラムジー]に乗って逃げてきたが、カイルの愛馬キッシュとは途中ではぐれてしまい、行方は分からなくて申し訳ないとしきりに謝っていた。



 幾つかの足りない物を買い、アッシュとトマス、アルナス、カイザーも一緒にルートの最終打ち合わせをした。




 その後、宿屋で待つ代表者達が夕食を共にと言うのを固辞し、家に帰ってトム達と最後の食事を楽しんだ。



 ◇◇◇◇



 翌朝早く、アッシュと共に数人の見送りの人達が街からわざわざ来てくれていた。


 よくアッシュと一緒にいた兵士達がアッシュに抱きついて泣いている。


 見送りに来てくれた人達に一通り挨拶をしてから、少し離れた場所で見ていたトム一家の所に行った。



「トムさんサラさん、ニック。 今までありがとうございました」

「やだよカイル、改まって。 いつでも帰っておいで。 待ってるからね。 気をつけて行っておいで」

「ありがとうございます。 ニック、トムさんとサラさんを頼んだぞ」

「任せて! カイル兄さんも頑張ってね」

「ああ」


 カイルは三人と抱き合った。 今生(こんじょう)の別れというわけでもないのだが、この人達は命の恩人だ。 別れが惜しまれた。




 そしてトマスの所に行った。 彼にも言葉で表せないほど世話になった。


「トマスさん、後をよろしくお願いします。 何かあればハリスに手紙を持たせます」

「カイル、気をつけてな」

「そうだ! トマスさん、ちょっとこちらに······」


 カイルはトマスを少し離れた場所に連れて行く。


「トマスさん、森の入り口に熊公が来ています」

「え? こんな人里に?」

「彼はユニオンビーストです」

「!·········やはりそうか」


 驚いてはいるが、なんとなく察していたようだ。


「彼の契約者はトマスさんです。 訳あって今まで契約しませんでしたが、多分熊公は契約する気になっていると思います」


 カイルはカイザーとアルナスから全てを聞いていた。


「きっとトマスさんが森に来るのを待っていると思います。 後で行ってあげて下さい」

「熊公が·········わかった。 ありがとう、教えてくれて」



 カイル達は、別れを惜しみながら出発した。




  ◇◇◇◇◇◇◇◇




 カイルとアッシュの旅が始まった。



 ナルナラを前にイザクを肩に乗せ、カイザーとハリスは空を、アルナスはハスランと並走しながら進んだ。


 朝の柔らかい日差しの中、ほんの少し前に進めた気がして、カイルの胸は期待に膨らんでいた。




 始めに向かう国[シドネッタ]までは、馬で四日かかる。


 最初の夜は小さな集落があったので、アッシュがお願いしてきた家の納屋に泊まらせてもらったが、二日目は野宿(のじゅく)になった。




 この時期の野宿は寒いが、カイルはユニオンビースト達に囲まれて暖かい。


 すると、寒そうにしているアッシュの横にライオンに転身したカイザーが寝転がった。


「アッシュさん。 カイザーが足の間に入って寝るようにと言っています」

「そ······そうですか······ありがとうございますカイザーさん」



 敬語になってる。



 大きなカイザーのお腹に背中を付けて寝ると、とても暖かかくて思った以上に柔らかかった。


「本当にユニオンビーストって優しいですね。 みんなそうなのですか?」

「たまに気の短い者もいるそうですが、別に普通だと言っています」

「カイル様は幸せですね」


「アッシュさんも、契約するユニオンと出逢えるといいですね」

「私なんて······それに、契約相手に出逢える可能性は低いのですよね」

「普通はそうみたいですが、これから多くのユニオンに会う機会がありますから、出逢えるかもしれませんよ」



 ◇◇◇◇




 次の日の夕方、小さな集落を見つけた。


「カイル様はここで少し待っていて下さい」


 アッシュは宿泊させてくれる家を探すために走って行った。




 暫くして「納屋に泊めてくれる家がありました」と、一軒の家に案内した。


 家の前で人のよさそうな老婆が待っていた。


「よろしくお願いします」


 挨拶したところで、後ろから声がした。


「テルラさん、只今戻りました。 お客さんですか?」



 カイル達の後ろに、ボサボサ頭で顔中(ひげ)だらけの大きな男が(くわ)を担いで立っていた。


「一晩泊まっていかれる事になってのう。 すまんが納屋の片付けを頼めるかい?」

「もちろんです。 皆さんこちらです」


 髭男は先に立ち、納屋に案内した。


「直ぐに片付けま············!!」


 振り返った髭男は、アッシュを見て突然動きが止まった。


「あ···あ···ああああっ!」



 あ?



「アッシュ隊長ぉぉぉ~~~~っ!!」


 アッシュはその男の顔をまじまじと見た。


「?······!······ウォルターか?」

「隊長ぉ~~~っ! よくご無事でぇ~~~っ!!」


 ウォルターは髭だらけの顔をグシャグシャにしてアッシュに抱きつき、涙をポロポロ流した。


「相変わらずだな」


 アッシュは自分より一回り大きなウォルターの背中を、子供をあやすようにポンポン叩く。


「お前も無事で良かった。 髭で分からなかったぞ。 後でゆっくり話そう」

「あっ! すみません! 直ぐに片付けます」


 ウォルターは子供の様にはしゃぎながら、テキパキと納屋の中を片付けていった。

 かなり大きな納屋だっので、お願いしてハスランや馬達も納屋に入れてもらえるようにしてもらった。


『カイル、ユニオンがいる』

『私見てくる!』


 アルナスが気付き、ナルナラが家の裏に走って行った。




 ウォルターは片付け終わるとストーブを運び込み「食事を運んで来ます」と、またバタバタと走って行った。


 その入れ違いにナルナラが戻った来た。


『やっぱりユニオンだったわ。 栗毛(くりげ)に白い(たてがみ)の馬の姿で[アネス]っていうらしいの』

『アネス?』

『あら、ハスラン、知ってるの?』


『ああ······なぜ彼女がこんな所に?』

『どうやらさっきの(ひげ)さんが契約相手のようよ。 本人も気付いていないようでしたけど』


「髭さんと言えば······アッシュさん。 さっきの人は?」

「カイル様、覚えていませんか? 副隊長の[ウォルター·スコット]です」


 そう言えば、いつもアッシュの後ろに大きな人が付いていた。

 短髪でツルッとした顔をしていた記憶がある。


「あっ! あの人······わかりませんでした」

「無理もありませんよ。 髭を生やした顔を見るのは初めてですから、私も直ぐに分かりませんでした。

 実は、彼は普段寡黙なのですが、本質は情熱的で大袈裟な所があるので少し暑苦しいかもしれませんが、我慢してやって下さい」



 そこへウォルターが食事を持って入って来て「私もご一緒します」と、アッシュの隣に座った。




 改めてカイルの正体を明かすと、これ以上ないと言うほど驚き、椅子をひっくり返して慌てて立ち上がって駆け寄り、カイルの前に来てドンッ!と膝を着き、胸に手を当てた。



 膝が痛くなかったのか少し心配。



「カイルランス様! お·····お会い出来て光栄です!······よぐ······ごぶぎでぉぇ······」


 最後の方は泣きながら言うので、ぐちゃぐちゃだった。

 さっきのアッシュの暑苦しいという話しもあって、カイルはもう可笑しくて必死で笑いを堪えた。


 本人は(いた)って真面目なので、絶対笑えない。




「ウォルターさんも無事で何よりです。 もういいですから椅子に座って下さい」





 ナルナラ達は「()()()()だって!!」とキャッキャと笑い(ウォルターには、ただ動物が鳴いているようにしか聞こえていない)アッシュも頭をポリポリ掻いていた。










ウォルターさん、暑苦し過ぎ。

( ̄0 ̄;

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