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ユニオンビースト ~霊獣と共に生きる者達~  作者: 杏子
第一章 ユニオンビースト
24/103

24話 光と光

カイザーと再会したカイルは父の死を知る。

自分が国王の資格がまだ有るのかを確かめる為に秘宝に触ると······

 24話 光と光




 クレモリス国の宿屋の部屋から朝早くに食堂がある一階に降りると、アッシュが待っていた。


「おはようございます、カイル様。 今日はどうされますか?」

「私は今世話になっている郊外の家に、一度帰ります」





朝食を食べながら、他の国を回ってアルタニアから逃げた人たちに会いに行くつもりだという事をアッシュに話した。


「私もご一緒します!」

「しかし······」

「失礼ですが、カイル様は旅をされた事はありますか?」

「···いいえ······」

「旅支度に食事や泊まる所はどうなさいます?  道はご存知ですか?」



「······いいえ······」



「御一人で行かれるなんて無茶です。 私がお供を致します!」


そう言われれば自分は何も知らない。


「アッシュ殿はそう言い出されると思っていたよ。 カイル、同行してもらえ」

「はい、そうしていただけると助かります。 アッシュさん、よろしくお願いします」


アッシュはパッと顔をほころばせた。


「お任せ下さい! いつ頃出発されるおつもりですか?」

「来週位には······」

「わかりました!! それまでには準備を整えておきます!!」


アッシュは食事も忘れて「どの国から廻るべきだ?······準備するのは、あれと、あれと、そうだ!あれも準備して······」指を折り、必要な物を考えている。



来週なのに·········




アッシュ、張り切り過ぎ。




三人は食後、東門に向かった。

一度帰るというカイルの見送りと、預けていたトマスの馬を引き取り、アッシュの牧場に移す為である。


カイルは門を出てハスランを呼んだ。


『カイル殿、お待ちしていました。 丁度いい、トマス殿とアッシュ殿も一緒にこちらに来て下さい』


ハスランに案内され、近くの森に入った。

首を捻る三人の前に白い鷲が降りてきたかと思うと、白いライオンの姿に変わった。


「カイザー! カイザーじゃないか!」


カイルはカイザーに抱きついた。


『カイルか? 見違えたぞ、成長したな』

「カイザー、逃げ出せたのだな!  お父様は? お父様はどこにいらっしゃる?  一緒に逃げる事が出来たのだろう?」

『·········』


カイザーの大きな顔がカイルに近づき、カイルの口をペロリと舐めた。


「!」

『カイル、貴方と契約する』

「カイザー?!」

『王はあの日に亡くなった』

「!!」

 

覚悟はしていたが、いざ真実を聞いてみると頭の中が真っ白になり、カイルは膝から崩れ落ちた。


「カイルどうした!」

「カイル様、カイザーは何と?」

「父は·········あの日に亡くなったと······」

「「!!······」」 


『カイル、来るのが遅くなってすまない。 グラントにお前を託され城を出たのはいいが、多くのユニオンに攻撃され、数日前まで潜っていた』

「お父様が······アルタニアが······」

『気をしっかり持て!』


「もうダメだ······既にコーヴが王だ······アルタニアは······コーヴの物になってしまった······」


カイルは頭を抱えた。

父の死を受け入れる事が出来ない。


何とかしてアルタニアを取り戻す事さえ出来れば、父が全てうまくやってくれる。 全て元通りになる。



 漠然とそう思っていた。



父が居ないとコーヴを倒してもアルタニアは空っぽだ。




「もう終わりだ······」

『何を言う! お前がアルタニアの王だ!』


カイザーが「ガウッ!!」と吼えたので、トマスとアッシュがビクッとした。


『コーヴが王座に座っていようと、アルタニアの王はお前だ!  それはきっと秘宝が証明してくれるだろう』

「秘宝?」


カイルはゆっくりと顔を上げ、カイザーを見上げた。


『お前が秘宝を触れば光を取り戻すはずだ。 それはアルタニアの王の証だ』

「そうだ······今日は私の誕生日だ。 しかし護りの剣と癒しの盾は本当に光を取り戻すだろうか······」

『間違いなく』


アッシュがカイルの言葉を聞いて興奮しだした。


「カイル様! 今日は十八歳の誕生日でしたね! 

秘宝をお持ちなのですか? 今日は光を取り戻す日です! 私もご一緒してもよろしいですか?

 光を取り戻す所を是非見せて頂きたい!

国王が亡くなられたのはショックですが、私達にはカイル様がいらっしゃる!

新しい王がいらっしゃるのです! そうですよね! ハミルトン殿!」



アッシュ······興奮し過ぎ。



「アッシュ殿の言う通りです。 カイルランス様、貴方はアルタニア国民の光です。 辛いお気持ちは分かりますが、落ち込んでいる時ではありません。

貴方がアルタニアの国民の為に尽力する事。 亡き王もそれをお望みでしょう」

「そうですね。 今は少しでも前に進まなければ······お父様、私に力をお貸し下さい」


カイルは祈った。


「アッシュさん。 行きましょう」

「はい!! トマス殿、馬をお借りします」


カイルとアッシュは家に向かって走り出した。


カイザーは再び鷲の姿に転身し、空から付いてきた。



 ◇◇◇◇



家に着くとナルナラ、イザク、ハリスが首を長くして待っていた。


『カイル! お帰り!』

『『カイル様、お帰りなさい』』

「ただいま。 アッシュさんを覚えてる?」

『もちろん、ハリスから聞いていたわ。 それより·········あれって······』


ナルナラは恐る恐る屋根の上にいる白い鷲を見上げた。


「カイザーに会ったんだ! 彼とも契約したよ」

『『『!!!』』』


ナルナラ達は一様に凄い驚きようだった。







家の中ではサラが食事の準備を始めるところだった。


アッシュを紹介し、食事の準備を手伝っているところに、トムとニックが帰って来た。



昼食が終わってから、カイルは思い切って話しをする事にした。



「皆さんにお話しがあります」

「どうしたカイル、改まって」

「今まで皆さんに黙っていた事があります。 実は······私は······」


カイルが躊躇(ためら)っているのを見て、アッシュが代わりに話してくれた。


「実は、この御方はアルタニア国王子、カイルランス·ロングフォード様です」

「?!·········」


みんな驚き過ぎて、言葉が出ない。


「私はアルタニア騎馬隊大隊長をしておりました。 カイル様にはアルタニアでも親しくして頂いておりましたが、昨日偶然カイル様と再会する事ができました。

アルタニア国王、カイル様の御父上は既に亡くなっておられた事が分かりました。 今はカイル様がアルタニアの国王です」


 みんなは話しについて行けず、呆然(ぼうぜん)として聞いている。


「カイル様の御持ちになっている剣と盾はアルタニアの秘宝で、王位継承者が十八歳になられた後に触れると、光を取り戻します」


アッシュはまるで自分の事のように自慢気だ。


「カイル様、剣と盾は?」

「私の部屋に」


カイルは自分の部屋を目で指した。


「取って参ります」



呆気に取られているトム達を置いてアッシュは護りの剣と癒しの盾を持ってきて、カイルの前に置いた。


剣と盾は骨董品店の奥の方に紛れていそうなほど、古く汚れているように見える。





カイルはゴクッと生唾を飲み込み恐る恐る手を伸ばした。


カイルが護りの剣に降れた途端、目映いばかりの光が剣から発せられたかと思うと、今まで古びた剣だったのが、美しい輝きを取り戻した。


シルバーゴールドの鞘には(つた)が絡まるような見事な細工が施され、その間には幾つもの宝石が散りばめられていて、今、(まさ)に作り上げられたばかりの様な美しさだった。



そして護りの盾にも同じように輝きが戻った。


護りの盾も同様にシルバーゴールドにゴールドの縁取りがされ、真ん中にはライオンが吼える姿が描かれている。 そして、その回りを囲む様に蔦の模様が描かれていて、これもまた見事な造りだった。


アッシュは感激し興奮していた。


「カイル様! 光が戻りました! やはり秘宝は貴方様を国王と認めているのです!!」




アッシュ、やっぱり興奮し過ぎ。




カイルはホッとしてニッコリと微笑んだ。 実は、光が戻らなかったらどうしようかと内心ドキドキだったのだ。




「トムさん、サラさん。 今まで黙っていて本当にすみませんでした」

「······カイルが······カイルランス様が、その様な重い運命をお持ちとは知りませんでした。 さぞ御辛かったでしょう」

「やめてください! ここでは[カイル]です。 今まで通りにカイルで居させて下さい。 お願いします」


 頭を下げるカイルを見て、トム達は困った様に顔を見合わせた。



「もう一つ、お話ししないといけない事があります。

 クレモリスにはアルタニアから逃げて来た人が大勢います。 皆さんは連絡を取り合って結束を固めてこられていました。 きっと他の国にもそういう人達が大勢いると思います。

 私はその人達に会いに行きたいと思います。

 私は名ばかりの王で大した事は出来ませんが、少しでもその人達の力になりたいと思います。

 今までお世話になるばかりで、恩をお返しする事が何も出来ていないのが心苦しいのですが、来週には出発したいと思っています」


「そう······ですか」

「収穫期なのにすみません。 せめて出発までは収穫のお手伝いをしたいと思います」

「カイルラン······カイルには、大きな使命があるのですね。 そちらの方が大切です。 私達の事は気にせず、使命を果たして下さい」


「カイル兄さんは、凄い人だったんだね」


 ニックは顔をかがやかせてカイルを見ている。


「いや······私自身が凄い訳ではないよ。 たまたま国王の息子として生まれてきただけだ。 しかし、こんな私でも必要としてくれる人がいるなら、少しでも力になりたいと思う」




「カイル。 君はきっといい国王になるよ」



「ありがとうございます。

 今は国がありませんが、必ず取り戻してみせます」






アッシュ、興奮し過ぎ。


長身で美男子で実力もあって、皆から慕われているのに、ちょっと3枚目。


アッシュ、可愛い!!

(*^^*)

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[気になる点] この章は、修正するのでなく「意見」いたします。 文章の前半から中頃まで、文の頭ひとつ分が空いていません。 その人の好きずきですが、一章から文の頭は空けていらっしゃるので、この章で空けて…
2020/09/12 21:10 退会済み
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