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ユニオンビースト ~霊獣と共に生きる者達~  作者: 杏子
第一章 ユニオンビースト
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22話 嬉しい再会

クレモリスで偶然再会したガントから嬉しい知らせを聞いた。


カイルは再び嬉しい再会を果たす。

 22話 嬉しい再会




「カイル様、よろしければ今からアッシュ殿の所へ御案内致します。 郊外の牧場で働いておいでです」


 ガントは店を閉め、二人を案内した。

 途中に立ち寄った宿屋の店員に「今夜いつものメンバーを集めておいてくれ」と頼んでいた。


 後で聞いた話しによると「いつものメンバー」とは、アルタニアから逃げて来た多くの人達の代表者で、月に一度あの宿屋で集まっているという事だった。


「カイル様、今夜の集会に集まる者達に是非御顔を見せてあげて下さい」と頼まれた。






 そうしているうちに、王都から少し離れた所にある大きな牧場に着いた。


「ここでお待ち下さい」


 ガントは牧童小屋にドタドタと走って行った。


 暫くして数人の男達がこちらに向かって走ってきた。 先頭を走る男の顔に見覚えがある。

 カイルも走り出し、立ち止まって膝を着いて挨拶をしようとした男に抱きついた。



「アッシュさん!」

「本当にカイル様なのですね!」

「そうです! アッシュさん! 無事で良かった!」

「カイル様」


 アッシュの腕に力が入った。


「カイル様、お顔を拝見させて下さい」


 カイルはアッシュから離れ顔を見せて笑って見せた。


「あぁ、カイル様だ······あんなにお小さかったのに······私より大きくなられて······立派になられた。 アルナスもカイル様をしっかり守ってくれていたのだな」


 アッシュはアルナスに向かって頷き、アルナスは尻尾をブンブン振っている。



 アッシュと一緒に走ってきた5人の男達は膝を着き、胸に手を当て、一様にううっ······と泣いている。



「カイル様、彼等はアルタニアの騎馬隊の者達です」

「皆さんもよく無事で」


 五人共「ありがとうございます」と一層深く頭を下げた。




 一人の隊員が涙を拭きながら立ち上がった。


「隊長、こんな所ではなくカイル様を中へ」


 兵士達に促され、カイルは牧童小屋に入った。


 この牧場はクレモリスの中でも大きく、騎馬隊だった者達ばかり六名が雇われ、幾つかある牧童小屋の一つにアッシュ達が暮らしている。

 奥の部屋に二段ベッドが三台置かれ、リビングは男所帯にしては綺麗に片付いている。



 リビングに落ち着き、トマスを紹介すると「おぉ······」と、どよめきが起きた。

 アッシュは立ち上がり、トマスに握手を求める。


「お噂は聞き及んでいます。 お会い出来て光栄です。 騎馬隊大隊長、アッシュ·セルカークです」



 カイルはアッシュ達の様子を見て驚いた。


「ハミルトン隊長と言えば剣の腕では右に出る者はなく、他国にまで名が轟くほどの御方で、アルタニア兵士の憧れの御方です」


 ガントが説明してくれた。

 


······そんなに凄い人とは知らなかった······



 ◇◇◇◇



 一段落した所でアッシュが現状について話した。



 クレモリスに逃げてきた者は、現在分かっているだけで二百三十八名。

 この内兵士が四十一名だが、今でも年に数人がアルタニアから逃げて来ているそうだ。


 五年前、アッシュ達は国民を連れてこの国に逃げ込んだのは良かったが、クレモリスは避難民に対して何もしてくれず、初めの数週間は食べるにも困り、苦労したのだそうだ。

 しかし非情な国に反してこの国の国民は親切な人が多く、住む所と仕事を提供してくれた。


 今ではアッシュ達が中心となり、避難民の救済処置を行っているという事だった。



 ◇◇◇◇



 日も落ち、みんなが集まる王都内の宿屋にそろそろ行こうかという事になった。


「帰りが遅くなると家の人達が心配するので知らせておかないと」


 カイルはハリスとハスランを心の中で呼んだ。 ハリスに持たせてサラたちに渡してもらうための手紙を書いているとアッシュが来た。


「御二方共、今夜はこちらに泊まっては頂けませんでしょうか? 宿は私が手配します」

「トマスさん、どうしよう?」

「皆も時間を気にせずカイルと居たいのだろう。 お言葉に甘えるとするか」



 そこへ《カイル殿》と声が聞こえた。


「あっ、ハスランが来た」

「ハスラン? ハスランが居るのですか?!」


 みんなが立ち上がった。

 表に出るとハスランが待っていた。



『お帰りですか?』

「いや、今夜はこっちで泊まる事になったから」

『承知しました······?······アッシュ殿?』

「ハスラン! 無事だっか。 ではブライト殿は?」


 アッシュはカイルの顔を見たが、カイルは目を逸らした。


「ブライトさんは······亡くなりました」

「!!······」




『カイル様、呼びました?』


 その時、ハリスがカイルの肩に降りてきた。


「ハリス、今夜は帰らないのでこの手紙をサラさんに渡してくれ」

『承知しました』

『ついでに熊公を探して、トマスも帰らない事を伝えてやってくれ。 多分森の入口辺りをうろついているだろう』

『彼に?······承知しました』


 アルナスは熊公が我慢できずに、人里に出てきて騒ぎにならないか心配だったので、ハリスにお願いしておくことにしたのだ。 

 ハリスは手紙を足で掴んで飛んで行った。


 そんなハリスを見送っていたカイルに、一人の兵士が遠慮がちに聞いてきた。


「あのう······カイル様······王様は······」

「分かりません、ブライトさんが殺されて直ぐに城を出ましたから。 その時はまだ······」


 みんなにも予感はあったのだが、聞かずにはいられなかった。 しかしまだ分からないという事で、お互いの顔を見合わせながら暗く沈んでいた。




「さあさあ!」


 アッシュがパンパンと手を叩いた。


「この御方がカイルランス様だと知ると、みんな大喜びするぞ! 早く宿に向かおう」




 アッシュが元気な声を出すと、みんなもパッと明るい顔になり「馬車を取って来ます」と一人が走り出した。








好きなキャラクターのアッシュが再び登場です。

大隊長に昇進していました。


この先、カイルと行動を共にする事になります。

(*^▽^*)

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