12話 集まらない情報
エグモント国がユニオンビーストに襲撃された?!
12話 集まらない情報
コーヴがユニオンビーストと共に現れユニオンビーストと共に消えたという噂は、瞬く間に各国に知れ渡り、ここアルタニアにも聞こえてきた。
「カイザー、コーヴはユニオンと契約しただけではないのか?」
『そうかも知れませんが、本来の姿のままで現れたのが納得出来ません。 それに数頭いたとか·········』
「カイルも四頭と契約しているが······」
『カイル殿は本当に特別です。 それに同時に何頭もの契約相手と出逢えるとは考えられません』
「では、どういう事だと思う?」
『一つだけ心当たりが······』
「何だ?」
『昔、どこかの国の王で我々ユニオンを操る能力を持つ者がいました。 どうやったのかは分かりませんが数十頭のユニオンを従えていたそうです。
しかし契約するユニオンと出逢い、自分がどれだけ非道な事をしているかに気付き、操っていたユニオン達を解放したと聞いています』
「その能力がコーヴにあったのか?」
『おそらく·········』
結局そのままエグモントに戻ることがなかったコーヴの行方は、ようとして分からなかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
コーヴが姿を消して一年が過ぎようとしていた。
アルタニアの誕生祭まで後一ヶ月という時、国王の元へ伝令の兵士が駆け込んできた。
『王様、大変です! エグモント国がユニオンビーストの群れに襲撃されました!』
「なに!!」
グラントは思わず立ち上がった。
「数百の大群が国民を殺戮しながら城に向かったそうです」
『そんなバカな!!』
「ひっ!」
カイザーが吼えたので、兵士が竦み上がった
「その後、どうなった?」
「それ以外の事は······」
「分かった、ご苦労だった。 ブライト、皆を集めてくれ! それと偵察隊をエグモントに送るように。 相手はユニオンビーストだ、決して無理はしないようにと伝えてくれ」
「承知しました」
ブライトは、報告に来た兵と共に走っていった。
「カイザー、どう思う?」
『ユニオンが無抵抗な人間を殺戮するとは考えられない。 やはり操られているのだろう』
「コーヴか······」
『恐らく』
「しかし、数百ものユニオンを操る事が出来ると思うか?」
『わかりませんが、そうとしか·⇩····』
「ふむ·········」
◇◇◇◇
数日後、偵察隊が戻ってきた。
五人編成のはずが、三人しかいない。
「後の二人はどうした?」
「申し訳ありません。 エグモントに入った途端ユニオンビーストに襲われ、二人殺られました。 結局何も分からないまま戻ってしまいました」
「いやそれでいい。 お前達はよく無事で戻ってきた」
「はい······それが······ユニオンビースト達は私達が国境を出た途端、追うのを止めて引き返していったので助かりました」
「国境?······そうか。 ご苦労だった。 ゆっくり休んでくれ」
◇◇◇◇
今年の誕生祭は中止になり、毎日のように会議が行われた。
とにかくエグモントの状況を知る必要があるという事で偵察隊や使節団を何度か送ったが、結局国境を越える事ができず、何も分からないままだった。
ある時、偵察隊が二人の農夫を連れてきた。
アルタニア国王の前でひれ伏している男達は、エグモントから逃げてきたのだという。
「ある日突然凄い数の化け物がやって来て、片っ端から人を襲いながら城の方に向かって行きやした。 幸い私は家の中に隠れていてなんとか難をのがれやしたんでやす。
城で何があったのかは知りやせんが数日後、国中に御触れがあったんでやす。 第二王子のコーヴ様が新国王になられたと。 そして法律が改正されやした」
「法律が? それも、数日で?」
「はい。 それはもう無茶苦茶な法律でやす。 今まで二割だった税金を七割にするというもんでやす」
「七割だと?!」
「はい。 それもそれなりの物を差し出せば税を軽減すると」
「バカな! 賄賂を寄越せと公然と言っているのか?」
「賄賂など払えやせんし、税を七割も取られたら私達に死ねというのと同じでやす」
「そんな無茶苦茶な法律が·········」
「それとこの国を出てはならないと。 出ようとすれば命の保証はないと書いてありやした。 その日からあの化け物を町中で見るようになりやしたが、以前と違って今度は何もしてきやせん。 目の前を通ってもまるで見えていないようでやした。 ただ、こちらから攻撃すると殺されるそうでやす。
それと国を出て行こうとすれば連れ戻されるのでやすが、あの鋭い爪で手加減なく掴むので、下手をすれば死んでしやうのでやすが、そんな事はお構い無いようでやす。」
「あなた方はよく逃げて来れたな」
「はい······実は六人いたのでやすが、見つかってしまって四人は捕まって連れ戻されて行きやした。 私達は彼らが捕まった隙に逃げ出したのでやすが、直ぐにまた見つかって捕まりそうになった時に、この方達に助けられて無事に国境を越える事ができたのでやす」
横に控える偵察隊を見た。
「ユニオ···化け物は、どれ位の数がいるか分かるか?」
「私達の見えた範囲だけでも、数十頭はいたと思いやす」
「それなら······数百はいると考えた方がいいな······」
「あのう······」
今まで黙っていたもう一人が口を開いた。
「俺······聞いたのです。 警邏中の兵士が話しているのを······」
グラントは次の言葉を待った。
「国王様とラーヴス様をコーヴ様が殺したと······そしてコーヴ様に忠誠を誓った者は好き勝手してもお咎めなしと·········私は郊外に住んでいるので実際に見た訳ではありませんが、町の者に聞いた話では兵士達は横暴を極め、ただで飲み食いするし女性には平気で暴行をはたらき、気にくわない者がいれば暴れたり剣で切りつけたりして、町中は無茶苦茶だと······」
「·········あんなに穏やかだった国が······情報、感謝する。 あなた方はアルタニアが保護する。 まずはゆっくり体を休めるがよい」
グラントは兵士に二人を連れて行かせた。
皆が出ていくと、垂れ幕の方に話しかけた。
「カイル、アルナス。聞いていたか?」
カイルとアルナスが出てきた。
カイルは勉強の一環で、垂れ幕の奥から王の謁見の会話を聞いている。
『実は先日エグモントに行ってみたのだが、やはり国境内には入れなかった』
「アルナスでも無理だったか」
エグモント国内に入る事さえ叶わないという事は、周辺諸国としては何もする事が出来ず、そのまま時だけが過ぎていったのだった。
物語が動き始めました。
( ノ^ω^)ノ




