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ユニオンビースト ~霊獣と共に生きる者達~  作者: 杏子
第三章 エボリューションフラッシュ
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27話 エボリューションフラッシュ

闇の精霊アンガとの直接対決。

しかし、どんな攻撃も効かない。

27話 エボリューションフラッシュ




『お前を殺してもいいんだな』


 アンガはクックックッと笑った。


『出来るものならどうぞ』


 ザギはカチンときた。 が、ここは我慢。


『お前が死んで黒い珠がなくなるなんて事はないんだな?』

『心配するな、我は精霊だ。 死ぬ事はない』

『ちょっと待て。 死なないならどうすれば勝てるんだ?』

()()()と言ってやる』



 なぜそんなに上から目線?


 精霊はいちいち上から目線でムカつく。 スイランは違うけど。





『私から行く』 


 ザギが助走をつけてから地面をトン!と蹴り、アンガの胸元目掛けて飛び上がった。

 角を前に出して体当たりしようとしたが、バシン!!と大きな前足で払われ壁に向かって飛ばされる。

 ザギは激突する直前、クルリと向きを変えて壁を蹴り、ストンと地面に降りた。




『やっぱりダメか』

《同時に行こう》 


 アンガに(さと)られないように、心で話す。



《私が左から囮になる。 ケビンは右から攻めろ》

《分かった》

《行くぞ!》


 ザギが飛びあがって壁を駆け上がり、横からダン!と、アンガに向かって角を突き出して飛ぶ。


『何度やっても無駄だ』


 アンガがザギを叩き落とそうと待ち構える。 

 アンガが振り下ろす腕を踏み台にタン!と飛び上がり、顎に頭突きを食らわす。 アンガは()け反るが痛みを感じないのか、反対の前足でザギを振り払おうとする。 その前足をすり抜けアンガの胸を踏み台にタン!と飛び、距離を取った。


 アンガがザギに気を取られている隙にケビンが右から回り込み、足をザザン!と、二回切り付けた。


 確かに手応えがあった(はず)なのだが、モヤッと黒い煙が傷を覆うと、切ったはずの足の傷が元に戻っていった。


「なに?!」


 すると、ケビンの腕程の長さの鋭い爪を持ったその足が踏み潰そうと襲いかかる。

 慌てて飛び退き、すんでの所で爪を避けた。



「見たか? 傷が治る」

『見た。 どうすればいい』

「とにかく、やるしかない!」



 再びザギと共闘するが、何度斬っても直ぐに再生する。



『ハハハハハ! 我を倒す事など出来ぬ!! 諦めろ!! ハハハハハ』

『ムカつく野郎だ! 黙れ!』


 ザギがイラつく。


 ケビンも焦りの色が濃くなってきた。 そろそろ体力の限界が近づく。



《どうなっているんだ!》

(らち)が明かんな。 何か弱点はないのか?······そうだ、額を刺せ!》

《額?》

《精霊に効くかどうかは分からんが、ユニオンの弱点は額だ。 出来るか?》

《弱点? 分かった、やってみる》



 ケビンは(すき)(うかが)い構える。

 ザギが再び飛び上がった。 アンガの振り下ろす腕が近付いた時、ザギはワニに転身して大きな口でその腕に噛みついた。

 腕を食い千切ろうと全身をくねらせ、首を降る。


『諦めろ!!』


 アンガが何とかしてザギを振りほどこうとする間にケビンは後ろに回り込んだ。 タタタと背中を駆け上がって頭の上に立つと、ザン!と額に剣を差し込む。


小癪(こしゃく)な!!』


 アンガが頭をブン!と降ると、ケビンが吹き飛ばされた。


『ケビン!』


 ザギが慌てて山羊の姿でケビンと壁の間に潜り込み、壁への激突を辛うじて免れるが、ケビンはそのまま床に落ちて背中をしこたま打ち付け、痛みで唸る。


「ウグッ!」 

『ケビン! 大丈夫か?』


《う···うん。 しかし、額に突き刺したのにダメだった。 他に(さく)はないものか······》

《あの野郎、何度斬っても元に戻りやがる。 実体ではないのか?》

《実体?······実体ではない?·········》


 ケビンは何か、考え込んでいる。




《試してみるか》


 ケビンはニッとして、ザギを見る。

 ザギはちょっと嫌な予感。


 ケビンが説明すると『ダメだ!!』と猛反対するが、ケビンは聞かない。



「試す価値はある」

『しかし······』

「もしもの時はフォローしてくれ」


 ケビンの意志は固い。



 ザギが折れた。




「行くぞ」


 ケビンは剣を鞘に収め、ゆっくりアンガに近づく。

 

『自殺をしに来たか?!』


 精神を集中しながら、更に近づく。


『吹っ飛ばされて肉片となって、壁にへばりつきたいか?! 戦う気がなくなったのか? ザギが小さいままで構わないのか?! 今までの戦いを見ていただろう?! 死にたいのか?!』


 アンガの慌てようにケビンは確信した。


『お前! 死ぬぞ!!』


 ケビンは進みながら目を閉じた。


『なら、死ね!!』


 ケビンの体をブンと風が吹き抜ける。


『来るな!! 死ね! 死ね!』


 ブンブンと何度も風のみが吹き抜ける。 既にアンガがいた辺りは通りすぎている。



 ケビンは気配を探った。

 右奥に微かな気配を感じた。


 剣を抜き、目を閉じたまま気配のある方へ走る。


『クッソォーー!!』


 アンガが吠える。



 ケビンは気配のある場所へ剣を振り下ろし、ピタリと止めた。



『参った』



 目を開けると、そこには小さな黒いドラグルの精霊がいた。

 そして大きなドラグルは跡形もなく消えていた。




『見破られるとは思わなかった。 (われ)の負けだ』

「お父様との戦いの後、傷だけでなく服まで元に戻っていたのがおかしいと思った。 幻術ではないかと」

『その通りだ。 完敗だ』



 アンガは手のひらにポンと黒い珠を出し、ケビンに渡した。


 ケビンは黒い珠を握りしめ、ザギに向かって小さくガッツポーズをしてから、珠を袋に入れた。



『これで全部揃ったな』

「やっとザギが元の姿に戻れるな」

「『イェ~ィ!!」』


 ザギとケビンは抱き合った。





『まだ、()()()()()が待っています』


 アンガはやけに神妙に、抱き合うケビン達に水を差す。


「『最後の審判?」』



エボリューション(進化の)フラッシュ(閃光)を受ける資格は得る事が出来ましたが、それが発動するかどうかは、神のみが知っています』


「『エボリューションフラッシュ?」』

『それは何だ?』

『とにかく、参りましょう』

『説明しろよ!』

 

 聞いても答えない。



 人の話しに耳を傾けないのは精霊達の流行りか?





 アンガは前を飛び、洞窟の入り口へ戻った。

 そこには赤いドラグルのダルゴが既に待っている。




『鍵の前でお待ちしております』




 そう言うと、アンガはポンと消えた。








エボリューションフラッシュを受ける資格を得ることが出来た。



あと二話で終わります。

もう少しの間、お付き合いください。

( ´∀` )b

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