プロローグ 1話 ユニオンビースト
初めて投降します。
説明が面倒と思われる方は、2話からがお勧めです。
気が向いた時に1話を読み返して下さい
よろしくお願いしますm(_ _)m
第一章 ユニオンビースト
プロローグ
アルタニア王国の、長閑な昼下がり。
農夫はノラ仕事を一段落させ、少し曲がりかけた腰をググッとのばしてから、ドカッと土手に腰を下ろした。
そして目の前の風景を見てニンマリと笑った。
「今年は豊作じゃなぁ」
深くこうべを垂れ、黄金色に輝く絨毯のような稲穂を感慨深くみつめていたのだが、とつぜん目の前の美しい絨毯の上を黒い影がいくつも通り過ぎた。
「なんじゃ?」
思わず上を見ると、まぶしい太陽の光を背にいくつもの大きな何かが、真っ直ぐに王都を目指して飛んでいく。
「な······なんじゃあれは!!」
大きな口をポカンとあけたまま、それらが通り過ぎるのを見ていると、今度は森の方からドドドッ!と地響きをともない、大小さまざまな何かが真っ直ぐこちらに向かって来る。
「こ······今度はなんじゃ!?」
逃げようにも、ここは小麦畑のど真ん中。
凄い早さでこちらに向かって来るそれらから逃げようもなく、あわてて土手の横にある小さなくぼみに体を押し込んだ。
ほとんど丸見え状態なのだが、気持ちはスッポリと隠れているつもりだ。
初めの1体がすごい地響きとともに目の前を通りすぎた。
隠れながらも、何か分からぬ物の正体を見ようと目をみひらき、一瞬で通りすぎるそれらを見て驚いた。
······馬?······鹿?······
いや、頭は馬にみえたが角があり、後ろ姿はどうみても鹿だ。 そしてなぜか犬のようなふさふさのシッポが付いている。
それは普通の馬の3倍ほどありそうな巨大さだった。
それと、気のせいかも知れないが、第3の目が額にあったように見えた。
それに続いてくる者も、色々な動物がごちゃまぜになっている。
そして、気のせいではなかった。
小ぶりな者は普通に2つの目だが、大きな者になるほど3つ、4つの目を持つ物もいたのだ。
しかし、どれも均整が取れていて美しい。
思わず見とれていると、1体が農夫を見つけて目の前で立ち止まった。
「ヒィ~~~ッ!」
農夫はもれ出す声を押し殺そうと、両手で力いっぱい自分の口を押さえた。
こちらの音を聞きのがさぬように長い耳をピンと立てている。
そして真っ赤な可愛い瞳でジッと農夫を見つめるそれは、可愛いウサギそのものだったが、体はどう見ても猿だった。
そして、人と同じ位の大きさがある。
『殺される!!』
ガタガタふるえだす農夫を見て、それは申し訳なさそうに微笑んで(そう、あり得ないが確かに微笑んだのだ)そのまま行ってしまった。
その後も何体かと確かに目が合ったが、どれも農夫を気に止めることもなく通り過ぎていった。
農夫はポツリと呟く。
「ユニオン······ビースト······?」
彼らが通りすぎた後の小麦畑は無惨なものだった。 全て踏みつぶされ更地のようになっている。
農夫は彼らがもう来ないか辺りを見回し、安全を確認してから、おもむろに起き上がり、自分の畑を見つめた。
「············」
言葉にならない絶望感で、その場から動けない。
恐ろしい化け物達をまのあたりにしたのに、すでに彼の心は踏みつぶされた自分の畑の事でいっぱいだった。
「どうすればいいんじゃ·········」
呆然とその場で立ち尽くしていると、小麦畑から何やらザワザワと音が鳴り始めた。
「なんじゃ?」
ふしぎに思って見ていると、小麦達がムクムクと起き上がり、気づけば元通り、いや、前より一回り大きく頭を持上げたのだった。
そのあと暫くして、今までにない巨大な何かが上空を飛んで行った事に農夫は気がつかなかった
◇◇◇◇◇◇◇◇
1話 ユニオンビースト
遠い昔、人の側には常にユニオンビーストの姿があった。
[ユニオンビースト]とは、いうなればキメラのようないくつかの獣が合体したような姿をしていて、獣や妖怪とかではなく、一種の霊獣である。
その体にある獣の数により、
1~2種は下級ユニオン、
3~4種は上級ユニオン、
そして、5種以上がS級ユニオンと呼ばれた。
また、体にある獣の数に比例し、S級ユニオンになると巨大な姿になる。
そして、体にある獣の数と同じ数の目があるのも不思議な特徴だった。
ユニオンビーストは自分の心がえらんだ人間と契約する。
そして、契約すると彼らには契約者がどこにいようと居場所がわかり、会話もできる。
彼らは体にあるどの獣の姿にも転身することができ、通常その獣の姿で人のそばにいた。
本来の姿のままだと、大きすぎて不便なのだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇
ある時、とある小国が、嫌がるユニオンビースト達をむりやり戦いの前線に立たせた。
ユニオンビースト達は自分達の愛する契約者を守るため、契約者の国を守るために仕方なく戦っていたのだが、その姿や強さとは裏腹に、戦いを好まず、心優しい彼らは、その境遇をうとい、悲しみ、1頭、また1頭と愛する契約者の元を離れて森の奥深くに隠れ、姿を現さなくなった。
◇◇◇◇◇◇◇
それから約千年近い時が流れた。
人々はユニオンビーストの存在を忘れ去り、物語か伝説の中でのみ語りつがれた。
しかし、ユニオンビーストの言葉がわかる特殊能力が代々受け継がれるアルタニア国王と、その側近だけはユニオンビーストの存在を知っていた。
ユニオンビーストの王[カイザー]が時々訪れていたからである。
カイザーは、今までは数十年に一度、突然現れていたのだが、今の国王[ロンダリオ]が王座についてからはずっと国王のそばにいる。
しかし、ユニオンビーストの存在を物語の中でしかしらない国民は、彼らの住む森を恐ろしい姿の化け物が住む森として恐れていた。
[禁断の森]と呼ばれるその森は恐れられ、法律で侵入を禁止されているにもかかわらず森に入る者が後をたたなかった。
というのも、ユニオンビーストの恩恵により普通の獣達が多く棲息し、森の恵みも豊富に採れたので、人々は生活のため生きるため、そして金のために命懸けで森に入ったのだった。
アルタニアは禁断の森である[タルラの森]と隣接している。
その為、警備の目をかいくぐり森に入る者が多くいた。
◇◇◇◇
最近、逃げ遅れて化け物に襲われる者が増えてきた。
今までは山菜や薬草を摘みに森へ入り道に迷ったとしても、慌てて逃げ出しさえすれば化け物達は追ってこなかったので余裕で構えていた。
しかし最近になって瀕死の状態になって逃げ帰った者がいた。 巨大な化け物に何度か攻撃を受けたというのだ。
この事件の報告を受けたアルタニア国王は事態を重く受け取り、森への侵入禁止令を国民に再公布した。
しかしそんな時、タルラの森からユニオンビーストの群れがアルタニアに大挙して押し寄せてきたと報告を受けた。
アルタニアの王都に押し寄せたユニオンビースト達は木々をなぎ倒し家や建物を破壊していった。
少し遅れてひときわ大きな姿をした個体が王都上空に姿をあらわした。彼の名は[アルナス]
タルラの森の王である。
鋭く尖った牛の角が生えた狼の頭を持ち、五つの鮮やかなブルーの目が光る。
数少ないS級ユニオンである。
アルナスは大きな鷲の翼を使いその巨体を思わせない軽やかさで空を飛び回り、前足は鋭い爪を持った黒豹の物だが、後ろにいくに従って現れる黄色が縦縞へと変わって虎の姿となる。 そして、二本の長い尾は優雅に風を切っていた。
彼はその恐ろしい姿を見せつけるように王都内をゆっくり旋回してからアルタニア城に向かった。
アルナスが城壁を越えた時に目に入ったのは、累々と横たわる仲間の姿と長い槍を振るう男。 そしてその後ろを守る白いライオンの姿だった。
頭に血がのぼったアルナスは、槍を持つ男に向かって急降下した。
あと少しの所まで迫った時、男が流れる動作で体をずらしながらスッと槍を振り下ろした、と思った途端、目の前が真っ暗になった。
2話から登場する[カイル]の成長を、暖かく見守って下さいね。
挿し絵を入れました。
自分では描けないと思っていましたが、何とか形になったので、イメージが掴めやすいと思って下手くそですが載せてみました。
他のユニオンも、もし描ければ載せていきたいと思います。
下手くそな絵を載せてイメージ崩れるわ!と思われたらごめんなさい( >Д<;)