花を噛む。
雲一つない青空の下、
その少女は、爽やかな春風に黒い髪をなびかせる。
白いワンピースを着た少女の足元には、景色いっぱいに広がる、花畑。
みどりの葉っぱに、白い花。
素足で少女は駆け巡る。
思い思いに。ありのままに。
ふと、立ち止まる少女。
少女は足元の白い花に目を移す。
その小さな命を摘む。
嬉しそうに、青い空に掲げる。
真っ白な花は、青い空によく映える。
大切そうに、眺めていた。
少女は花を、口元にもってゆく。
真っ赤な唇が、その花を包み込む。
少女は、白い花を噛んだ。
ちらりと除く赤い舌。
細かくなった白い花。
少女は黒く大きな瞳をパチパチとさせながら、
花を口にくわえるでもなく、
花を食べるでもなく、
花を噛んだ。
それは、これほどまでにない美しい光景だった。
少女が無垢であるから、美しい。
残酷さを知らないから、美しい。
目的のない行動だから、美しい。
意味をもたないから、美しい。
失礼ですが、おっさんが同じことをしていたら、恐怖ですよね。