第十六夜 先生と助手
突然ですが、お知らせです。
『落ちこぼれ勇者が可哀想すぎたので、チートの俺は勇者の従獣魔になってやることにした』という小説も書き始めました。
作者が同時連載をするためにも交互に投稿するか一話分の文が大変短くなるかも可能性があります。大変、この小説を見てくれてる読書様には申しわけありませんがどうかご了承くださいますようお願い申し上げます。
時間がありましたら新しい小説の方もご覧頂けると幸いです。
では、長々と作者の宣伝&お知らせ失礼しました~。
「せんせーい!」
町明かりが灯る所に小さな体には似合わない、頭に大きな渦巻き貝を被った魚人族一人の男の子が駆ける。
先生と呼ばれ振り返った人物、それは黒いシルクハットに紳士服をスラリときこなす針鼠であった。
「やぁ、ルイス。時間通りだね」
「はい、バートン先生!」
ルイスと呼ばれた少年にバートンと呼ばれた針鼠。二人は師弟関係であった。
バートンは各地でも名高い歴史考古学者であった。鋭い観察力と冷静な解析能力。そして、幅広い遺跡の智識。
貴族の生まれもあってか気品もあり、身分関係なく誰にでも紳士の行動をバートンは心掛けていた。なので、世の女性たちもほっておくわけもなく影で人気の紳士であった。でも、バートンは考古学者なのでもし、依頼が入れば魔族や人間の各国を飛び回らなくてはならない。だから、今だバートンは寂しい独り身であった。腹違いの兄にも心配される始末。
ルイスの方は魚人族という海に棲む珍しい種族の生まれであった。
海の中を自由に歩けたり、海の生物と話すこともできる特別なスキルを持っているため、水中の中では最強の種族とも言えた。
ルイスは陸の生活に憧れ、上がったものの、ルイスは直ぐに悪い人間たちに騙され捕まってしまった所を助けてもらったのがバートンとの出逢いだった。ルイスは必死にバートンに頼み込み、将来の考古学の卵としてバートンの助手兼弟子にしてもらった。
それ以来、二人は色々な場所を旅していた。
「でも、先生。せっかく家に帰ってきたというのにどちらに行かれるのですか?」
久々にバートンの自宅のある王都へ帰ってきた二人。暫くは急な仕事も舞い込んでこなそうなのでお互い休日をゆっくり過ごそうとバートンは言っていたのだが、突然ルイスは今日呼び出されたのであった。
「うん、いい質問だねルイス。だけど、それは着いてからのお楽しみだよ」
そうつぶらな瞳でにっこりと笑うバートン。どんどんと町から離れ、近くにある森の中へと足を進める。
「今日は私のとっておきのお店をルイスに教えてあげよう」
「お店って……。こんな森の中にですか?」
どう辺りを見渡してもお店どころか人の影すらも見えない。
「そろそろかな?」
バートンは懐の銀の懐中時計を取り出し、空を様子を伺う。
今日は月がよく見える綺麗な夜空だった。
すると、目の前にあった白い三日月模様が描かれた石が光り輝き始め赤い門と姿を変える。
「うわぁ!な、なんですかぁ!?これ!!」
「ルイス、これはね『鳥居』と言う異世界の建物だよ」
「い、異世界……?」
バートンは怯えるルイスの手を握り、鳥居を潜ると共に景色が変わる。目の前に現れたのは綺麗整えられた石段に緑の葉を生やし、風に揺られる木々。微かに流れる水の心地よい音もする。
そして、不思議な雰囲気を放っている大きくそびえ立つ 木造の建物。
「え、ええええーーっ!!」
「驚いたかい?ルイス」
「だ、だって急に目の前にあんな大きな建物が現れるし!それにさっきまで夜だったのに日がここは出てますし……」
「ここは謎が多い所だからね。何が起こっても不思議じゃないのさ」
ルイスの頭の渦巻き貝をそっと撫でるバートン。「お祈りとかしてくかい?」とバートンがいうと「はい!」とルイスは元気よく返事をした。
「いいかい?ルイス。この木造の建物は『神社』と言って、異世界に住んでいる神様を祀っている建物なんだ」
「異世界の神様ですか……。なんか凄いですね」
「そうだよ、凄い方なんだ。だから決して失礼なことはしてはいけないよ?」
「はい!先生!!」
そうバートンと約束するルイス。
「なら、今から私の真似をしてごらん」
バートンは鈴の音を鳴らし、二回頭を下げた後、二回拍手をする。そして、最後に静かにまた一回礼をする。
「?それはなんですか??先生?」
「これは『二礼二拍手一礼』と言って、神様にお祈りをする時のマナーかな?」
「それってお祈りする内容はなんでもいいんですかぁ!?」
「あぁ、ルイスの好きなことをお祈りしてごらん?」
「はぁい!」
ルイスは鈴の鳴らし、綺麗な音色だな思いつつバートンが教えてくれた通りの『二礼二拍手一礼』をする。
バートン先生みないな立派な考古学者になれますようにっとお祈りするルイス。
「先生、この建物の中に入るんですか?」
「いや、私たちが用があるのはあっちの小さな建物の方だよ」
そうバートンが指を指すのはあの大きな建物に対し、少し小さめな掘っ建て小屋のような建物が一つ建っていた。だが、この甘くて美味しそうな香りは確かにあの建物から漂っていた。
「もしかして、甘味ですか?!」
「うん、和菓子という特別な菓子を取り扱ってる『月見草』と言うお店でねぇ。私のとっておきのお店なんだ」
甘味は高価な食べ物なので、特別な時にしか食べられない庶民にとっては貴重な食べ物であった。
バートンは扉を開けると、直ぐに「いらっしゃいませ」と声が聞こえた。
「二名様ですか?」
アクアはお客の人数を確かめるため二人に近く。
「おや、初めて見る顔だね?」
「はい、初めまして。アクアと申します」
「アクアさんだね。初めまして、私バートン・クリステルと言います。そして、こっちは私の助手ルイスです」
「は、初めまして!」
「二人で『クリームあんみつ』を食べに来たんだが席は今、空いてるかい?」
「はい、此方のお席にどうぞ」
アクアは端の席に案内し、お絞りを渡し飲み物を聞く。
「私には暖かいリョクチャで、この子には出来たらあまり苦くないお茶で冷たいので頼むよ」
「はい、でしたらゲンマイチャがおすすめですよ」
「それじゃ、それでお願いします」
アクアは一礼し、オーダーを調理場へと届ける。