愛の呪い
「いやー悪いねおじさん」
「いや……話し相手が欲しかったからさ」
謝罪する彼女にそう答えた。
「あー確かに私ばっかり身の上話してたね」
そうだったようなきもする。どうでもいいが。
「寝るまでこっちの話も聞いてもらってもいいかな」
「うん。別にいいよ。でもその前にシャワー借りていいかな?」
「ああどうぞ。着替えはあるのかい?」
「あはは。大丈夫。準備万端だよ」
彼女は浴室に向かい、俺は彼女を待つ間天井を見つめていた。
「お待たせ~おじさんの家って浴室も片付いてるねえ。独身男性はもっとどこもかしくも散らかしてると思ったよ」
「まあ、個人差によるんじゃないかなそれは」
俺は突発的に死ねる事を期待して、なるべく家の事で迷惑をかけないように綺麗にしてるだけだ。
「それじゃあさ。愛について語ってもいいかな?」
「ぷっ……なにそれ~。どんな話かと思ったら……いいけどさ~私の身の上話聞いた後に愛の話って」
「安心していいよ。甘い話じゃないからさ」
そして溜めて吐き出すように俺は言う。
「惚れた弱味っていうやつかな。いや俺はバツイチなんだけどさ。嫁の話」
「奥さんいるの!?」
「いた、かな? 死んだからさ病気で」
「そう。なんだ……」
「そんで嫁が最期に言った言葉がね『死なないで』なんだよ。おかしいよね人はいつか死ぬっていうのにさ」
「おかしくはないと思うよ。おじさん何て言うか覇気がないんだよねいつ死んでもおかしくない顔してるよ。今も」
「自分ではよく分からないな」
「私は分かるよ私もおんなじ顔してる時期があったからさ。もう今は目が覚めてあちこちふらふら楽しくしてるから私はもうそんな顔してないけど。死のうとしてる顔だもん。後を追ってほしくなかったんだよ」
「そうだよ。俺はね死にたいんだよ。死なせてほしいんだ。辛いんだよあいつのいない毎日がさ。あいつを奪って自分も死んだ娘が憎いんだよ。あいつが死んで悲しいんだよ」
ちょっと目から涙がでてしまった。
感情的になると自然とでてしまう。
「……時間を置くしかないよ。時間が全部解決してくれるからさ……私に言えるのはそんだけ。シャワーありがとね出ていくわ」
「なんでなんだ。なんで死なせてくれないんだなんでなんだなんで最期にあんな言葉を」
また、思考が煩雑して支離滅裂になる薬を飲まなくちゃいけない。飲むんだ早くのむんだのむんだーーー
薬を飲んだ。不安感と女が消えた。
眠気が襲ってきた。
寝ることにした。