深夜俳諧
真面目に書きますので暖かい目で見てほしいです。
家から徒歩五分の公園でベンチに座り、煙草を吸う。
医者から止められていたがどうでもいい。
確実に自分の肺にダメージを与えて、それで緩やかに死ねるなら煙草というものは便利な自殺道具だ。
上を見上げれば夜空は世界を呑み込んで、暗い静寂の中にただ一つ輝く月をただひたすらに讃えていた。
ただ自堕落に生きている。
なにも残せなかった。
なにも出来なかった。
そんな人間なのに生きている。
橋から跳ぶか山から跳ぶか。解答はいつもでない。
一人の人間の言葉がいつもその解答を躊躇わせる。
「こんばんは~月が綺麗ですねえ」
また解答をだせないまま考えが霧散し、霧散した声に応える。
「ああ。そうだな……お嬢さん」
自分より若いであろう女性に話しかけられるのは数年ぶりだ。
「こんな夜中に、一人で出歩くと危ないですよお嬢さん」
至極まっとうな事を言ってみた。
「そうですねえ。えっとそのために見回りしてるんですけどねえ私」
よくみるとお嬢さんは警官の制服を着ていた。
「怪しいものじゃないですよ」
「あはは。上を見上げて数十分ぐらい身動きしない人をみたら声をかけてしまいますよ」
「それはすみませんでした。大丈夫ですよ俺は大丈夫ですから」
「えっと運転免許証あります?」
……長い夜になりそうだ。