プロローグ2 【走馬燈?】
これは――
脳裏に浮かぶのは懐かしい街並みと、優しく温かだった家族や親しい友人と以前の己の姿。少しおぼろげながらも次々と蘇る記憶の数々――。
家族の団らん、友との日常、好きだった景色、物、食事、そんな平凡ながら幸せだった日々の光景、忘れていた大切なものが次々と蘇り、魂が震えるようだ。
――ああ、わかった。
思い出されたそれは始まりと終わり、そして新たな始まり、俺は転生していたのだ。一度終わって、すべてを忘れてまた始まっていたのだ。
平凡な一般人としての人生、日本という小さな島国での一生。
強靭な戦士としての人生、生と死の狭間に身を置き戦場を駆け抜ける己。
穏やかな懐かしさと、新鮮で鮮烈な戦いの記憶、どちらも確かに己のものであった。
――そうか、これが走馬燈というやつか。
体の感覚はまったくない。徐々に意識も希薄になっていく。これが己の最後のときなのだろう。だからこそのこの現象なのだろうと思った。
――だが、悔いはない。
二度の生の記憶、そのどちらも己の中で確かな輝きを放っているのがわかる。二度とも終わりは突然であったしそれほど長いわけでもなかった。しかしそれでも、思い返せた人生を己は、素晴らしいものだと感じた。
これから己の存在は完全に消滅するのか、それともすべて忘れてまた転生するのか、はたまた天国だか地獄だかの黄泉の国へ行くことになるのかそれはまったくわからない。
しかし、少なくとも己のこれまでに後悔はない。ならばこの先の終わりでも始まりでも、己はあるがままに受け入れられる。そう、感じたのだった。
やがて穏やかな気持ちで光の底に沈みゆく彼の意識は、最後に、光に染まらぬ白い影を見た気がした――。