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第15話 再び会得? 水の魔法と秋也の考察。

魔法についての説明回。

途中でややこしい科学的な考察が入りますが、割と適当です。深く考えないでください。

しかし、話の中に説明や解説を混ぜるのって難しい……


粗方書き終わった後に間違えて文章を消してしまい、駄々下がりのテンションと怒りの勢いで書いてしまいました。

「どっっせぇぇぇい!!」


 女の子にあるまじき声を張り上げながら、今日も茜は鍬を振るう。大振りに振るうので、固くなった土も何のその。畑の深い所まで桑の刃先を叩き込み、一気に地面を掘り返して畝を作っていく。大振りなのに、彼女の変化した肉体のなせる技か相も変わらず耕す速度も半端ないので、まさにトラクター要らずと言うのは茜の言葉だ。

 先日見つけた腐葉土は、あのあと二人でなん往復もして畑に撒いた。それだけで2日がかりだったが、お陰て全ての畑に栄養価の高い土を撒くことが出来た。今はそれを畑に混ぜ混み、馴染ませるための作業をしているところなのだ。

 

「ほらほら、どんどん耕さないと今日中に終わらないよ~」


 いつものように反対側を耕している茜から激が飛ぶ。農家生活に対して、「農家の就業時間は大体日の出から日の入りまで。」と言っていたが、それを地でやるあたり妥協が無い。まぁ、最初はどんなブラックだよとも思ったが、朝が早起きな分、昼食と間食の間に午睡も挟まるので、それほど苦では無いのが有り難い。それでも、この生活に慣れるまでもう少し掛かりそうだが。

 俺は手を振って茜に応え、再び鍬を構えて作業を再開する。ちなみに、他の農家では牛にプラウを牽かせて畑を耕すのが主流らしく、人手で耕している家は少ないそうだ。ついでに茜はこの村の農業形態も調べたらしい。この村では労力と土地に余裕がある家は放牧を組み合わせた三圃式農法を、労力がそこまで割けない家は休耕を組み合わせた二圃式輪作で安定した収量を維持しているらしい。合間合間でよく調べたもんだよ、ホント。

 その中で、俺達が今耕している畑と家の元の持ち主のことも聞いてきたと話してくれた。この家の元の主は夫婦二人と子供一人の一家でこの村に越してきたらしい。しかし、慣れない作業と中々増えない収量に焦りを感じたのか、全ての畑で作物を植えて土地一杯に色々な作物を作っていたらしい。そして、そんな方法で作物を作れば、当然収量が減り始める。それを補うために今度は連作する作物を更に増やして、何とか収量を保とうとするが、収量の減少は止まらないという悪循環に陥る。最後は一家の人間が過労で倒れ、そこで一家の農家生活も終わりを迎えたらしい。不幸中の幸いなのは、畑が完全に死ななかったこと、借金持ちにならなかったこと、そして死人が出なかったことか。一家は家と畑を村に返して市街にいる親元に帰っていったらしい。

 結果はなるべくしてなったと言う感じだが、とことんまで不幸な話でなくてよかったよホント。住み始めた後に曰を聞かされたら、当分はブルーになりそうだからな。

 俺達もまた似たような状況にならないために、まずは目の前の畑を耕すかね。ホント、農家のイメージは年がら年中鍬を振っている感じだったが、あながち間違って居ないのかもな。



◇◆◇



「さて、そろそろいい時間かな?」


 わたしは作業のキリの良い所で一旦手を止め、畑の一角に打ち込んだ杭を眺めて呟いた。これは秋也さんが腕時計の針と太陽の位置で大体の方角を合わせて作った簡易日時計で、凡その時間がわかるようになっている。まぁ、わたしは太陽の位置で時間感覚がわかるようになっているから、そこまで気にしなくてもいい筈なんだけど、時計があるとついつい眺めてしまう現代人の悲しい(さが)だね。ちなみに、農作業をするときはスマホは持ち歩かないことにしています。と言うか、壊したらいけないので基本的には携帯しないように決めました。携帯電話なのに不携帯とはこれいかに。この世界じゃ携帯する意味がないんだけども。

 で、日時計によると、今の時間は大体お昼頃。作業の合間の楽しい一時、お昼ご飯の時間です。


「秋也さ~ん、そろそろご飯にしよ~。」


 わたしは持ってきていたお弁当を広げて、秋也さんに声をかける。秋也さんもわたしの言葉に手を振って応えると、此方へと歩いてきた。


「あ"~、さすがに手がヤバイ……」


 座りながら掌を揉み呟く秋也さん。見てみるとその手は真っ赤に腫れていて、皮が剥ける寸前だった。先日の盗賊騒ぎのときに剥がれた爪もまだ治っていないので益々痛々しい。


「うわぁ……あんまり無理しちゃダメだよ?」


「そうは言ってもなぁ……茜にばっかり働かせる訳にもいかんさ。」


「でも、この世界にはちゃんとした薬が無いんだよ? ちょっとした怪我でも大事になるかもしれないし……」


 消毒薬とか抗生物質がない世界、せめて清潔な水でもあれば良いんだけど……


「……火の魔法みたいに水とかも出せないかなぁ……?」


「おいおい。さすがにそれは無理だろ。」


「え~? でも、秋也さんは魔法で色々再現してなかったっけ?」


 最初に覚えた時点でライターの火でそのあとトーチバーナー、盗賊騒ぎの時には照明弾まで再現していたし、イメージ次第ではどうとでもなるんじゃないかと思うんだけど……秋也さんとさんと違ってわたしは魔法が使えないから、試せないし……


「現象を起こすのと物質を生み出すのは意味が違うんだ。さすがにそこまで現実離れしたことが出来るとは思えんぞ。」


「でも、わたし達の身に起こっていることも十分現実離れしているんだよ? いまさらそれが一つ増えるくらいなんてことないと思うよ。」


 ダメで元々、やってみても損は無いわけだし、試してくれないかなぁ。わたしは本来の目的を忘れて、期待の目で秋也さんを見つめ続けた。



◇◆◇



 なんか、凄く期待された目で見つめられ、思わず目をそらす。これはあれか。試さないとダメな空気だな。


「仕方ない。とりあえず試してみるから、少し考えさせてくれ。」


「え~? この前みたいに魔力を流す云々で出来るんじゃないの?」


「何もないところに水を出すってのがいまひとつ想像できないんだ。ちょっと待っててくれ。」


 すぐに試せないことに茜は不満そうだが、俺は魔法で水を出すということがどういったことなのか、考えを纏めてみる。

 さて、世の中には質量保存の法則ってものがある。そこに存在しているであろう物質は減りもしなければ増えもしない、という奴だ。そして、もしもそれを無理に変えようとすれば、質量はエネルギーに変換されて放出されることになる。極端なことを言えば、核分裂や核融合を起こしたときに発生するアレだ。

 何もないところに質量を持った何かを生み出そうとすれば、それ相応のエネルギーが必要になるし、その質量を変えようと思えば、変化させる量に応じてエネルギーが放出される。これはエネルギー保存の法則という。

 それを無視して物を出したり消したりと魔法のようなことは早々できることではない。いや、魔法だったか。

 火の魔法の時は魔力を熱エネルギーに変換、発火現象を起こしているのだと推測が出来る。魔力を、何らかの燃料へと変換しているわけではないはずだ。

 また、魔力は生命力であり、睡眠などの休息や食事などで回復するということらしいが、そこから考えるに、魔力とは人体を維持しているエネルギーと同義ということで良いのだろうか? だとすると、魔力とは一口に言っても、さまざまな形のエネルギーとして存在していることになる。


 で、だ。水とは何か? 正式名称は酸化水素。水素と酸素の化合物で、分子としていたるところに存在しているありきたりな物質の総称であり通称だ。その水分子が液体として存在している状態のことを水と呼ぶ。

 では、水を物質として魔力から変換するにはどうするか? 液体が気体に変化する際に気化熱という言葉が用いられるが、これは水が蒸気に変る際に周囲から吸収する熱のことだ。水に関わらず、液体が気体に変化する際に周囲の温度が下がるのこのためである。

 魔力は熱エネルギーに変化すると仮定するのなら、空気中の気体となった水分から熱を奪えば液体になるワケだが、大気中の水分なんてたかが知れている。なら、魔力のエネルギーを質量に変換するということで良いのか? いや、ダメだ。エネルギーは変換したところで等価だから、魔力が熱になるだけだ。質量は生まれない。


 ならば魔力から熱を奪えばどうか? 何が残る? 何に変化する? 試してみよう。

 

 イメージだ。魔力の流れを左手に集めろ。そして、その魔力から熱を放出する様を思い浮かべる。冬場の窓ガラスの結露のように……


「あ!? 水が出てきた!? 凄いよ秋也さん、出来てるよ!」


 不意に茜が声を上げる。驚いて俺も自分の翳した手を見ると、その表面にはびっしりと水滴がついていた。


「……手汗か?」


「そんなわけないでしょ! 魔法なんだって! 水の魔法!」


 そういわれて、現れた水滴を舐めて確かめてみる。……が、やはりしょっぱい。多分、もともとの手汗と混じったか。


「やっぱり魔法って凄いなぁ!」


 ……確かに出来てはいるんだが、なんか釈然としない……エネルギーは等価なのに、熱エネルギーがなくなっただけで質量に変化? 明らかに別の何かが入り込んでいるだろう……

 エネルギーは質量とも等価と言われてはいるが、これはエネルギーは質量になると安直に示したものじゃないぞ? 当てはまるかどうかは知らないし、証明もできないが、魔力以外にももう一つ、何かエネルギーとなるものが混ざっているということだろうか? うん、考えていてわからなくなってきた。


 ……まったく、何が魔法だよ。とんだ科学論じゃないか。これはこの世界でも会得している人間や使いこなせている人間は少ないんじゃないか?

 まさか、、魔力は運動エネルギーや位置エネルギーにまで変化したりしないよな……?


 しかし、熱を上げるのはわかっていたが、下げることも出来るのか。応用したら冷蔵庫も作れそうだな。また少しずつ試すか。

 茜は新たな魔法を自分のことのように喜んでくれている。今は素直に俺もそれを喜ぶことにしよう。


魔法の発現には、熱エネルギーが大きく関わっていますが、終夜の予測の通り、それ以外にも混ざっているものがあります。

たとえば、秋也のトーチバーナーは、本人は熱エネルギーだけだと思っていますが、実際は別の要素がしっかりと存在していますので。


あと、太陽と時計で方角のくだりは、腕時計の短針を太陽に向けて、時計盤の12の間を2等分する方角が南だというアレです。


くどいようですが、魔法を科学で考えているシーンの秋也の考察は適当です。あんまり突っ込まないでいただけると幸いです……orz


2016/05/28 話数がズレていたので修正。

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