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幕間
「若様、お時間ですよ」
ギデオンがサリムやバスティアンと思い出話にしんみりしていると、侍女が声をかけて緊張が高まる。
メデリックにおいて結婚式は婚家で行うものである。
結婚式の当日、花嫁は屋敷の裏口から入り花婿は表から入る。その際、お互い一切顔を合せず、控え室もできるだけ離れた部屋に用意される。
そして式が始まる時間が来れば、花婿は指輪を持って花嫁を迎えに行くのだ。
「では、行って参ります」
ギデオンはバスティアンとサリムに挨拶をしてから部屋を出る。
手に持った指輪の入った箱をしっかり握りしめて花嫁が待つ部屋へ向かう。
これからやっと、自分とアレクシアは夫婦になる。やがてこの屋敷には子供も加わるだろう。
今日が長い道のりの終わりではなく、始まりなのだ。
ギデオンは花嫁の部屋の前に立ち、ゆっくりと二度、扉を叩く。
「アレクシア、迎えに来ました」
名前を呼ぶとはいと返事があって、扉が開かれる。
「お待ちしておりましたわ、旦那様」
純白の花嫁姿を身に纏ったアレクシアは、これまでで一番美しい笑顔を湛えていた――。




