プロローグその2
「よぉし……やっと撒いたか。しつけぇーんだよなぁ」
街中で絡まれていた女の子を助けたはいいが、まさか絡んでいた不良と女の子がグルだったとは……世の中分からんね。
ケンカはそれほど強いほうじゃないし、逃げてきたはいいものの。
「どこだ……ここ?やっべぇなぁ普通に迷っちまったよ。もう周りも暗くてよく見えねぇし」
無我夢中で逃げてきたから気づかなかったがどうやらここは山の上の方らしい。やたら走るのがしんどかったのはそのせいか……。そういえば、この山の近くに学校があるんだっけか?仕方ねぇ、今日はそこで夜を明かすとしますか。
「明日の朝にでも山を降りればいいよな!とりあえず建物……建物……お?」
俺が薄暗いあたりに目を凝らすと木々の生い茂る向こうに薄らと光が漏れている。これはラッキーだ。今は冬前で気温も下がってきているし、出来ればこんな夜の山の中を長時間は歩きたくないからな。
俺は光の方に駆け出した。
…………
………
……
…
「まったくステラってば……いつも変なからかい方するんだから。まぁ、あの分じゃまだバレてないって事だよね?」
僕は着ていた服を脱いで寝巻きへと着替える。その際に見える雪のように白い肌にはサラシが巻かれていた。
「ふぅ……僕は幸子達みたいに大きくないけど、今はそれが救いだなぁ。昔は嫌いだったちいさな胸に今は助けられてる……皮肉なもんだよね」
はぁ、と1つため息を漏らしつつ窓から入る風に身を震わせる。そういえばもう秋も終わるんだよね……。風惹かないように窓は閉めておこうかな。
そう思い窓の枠に手をかけた瞬間だった。
「ん?」
「え?」
やけに擦り傷だらけの顔がそこにはあった。
…………
………
……
…
たどり着いた先は学校ではなかった。どうやら建物の裏側に出たらしい。庭に……畑に……な、なんでテントなんか張ってあるんだ?
「なんか立派な建物だなぁ……明かりはこの建物だったんだなぁ。お、ちょうど2階の窓があいてるじゃねぇか!ついてるー!」
趣味でずっとフリーランをしてた俺にとっては建物の2階によじ登るのはわけない事だ。1階から堂々と入っても不審者っつって追い返されるのがオチだからな。上手いこと忍び込んで物陰に隠れて寝ればなんとかなるだろ。
「もうちょっと……よし着いた!……って、え?」
「ん?」
「「…………」」
俺の目の前には中性的な美形の顔がそこにはあった。
「こ、こんばんはぁ……あはは」
「な、なん……あ……う」
相手の顔が青くなったと思ったらふと胸元に目を落とす。そこには小さいが、柔らかそうな乳房が確かに2つ着いていた。
やばいやばい、やばい!ここで悲鳴なんか上げられようものなら逮捕待ったなしじゃねぇか。何とかしないと……。
「き、きゃ!もご……」
「ご、ごめん!でも叫ぶのだけは勘弁してくれ……俺は何も見てないから!!ほら、目もつぶってるし!」
「んー!んー!」
「ちょ、そんな暴れたら……うわぁああ!?」
やばい、と思った時には頭に強い衝撃。幸い下は土だからよったものの痛いことに変わりない。
俺は薄れゆく視界の中、また青くなった顔で俺を見下ろす女の子とめがあった。