学園生
スーパーからも川口昴の自宅からもそれほど遠くない位置にその家はあった
2階建てのそう悪くない外見の家、それが大貫雄大の住んでいる家だ
俺達はそんな大貫の家の前まで来ていた
「チャイム、押さないの?」
じれったいと感じているのか、佐藤さんは聞いてくる
「いや、押すけどさ...」
「何でそんなテンション低くなってるのさ」
佐藤さんはそう言うが、こっちだって緊張しているのだ
「私は押せないんだから昴しか押せる人いないよ?」
「わかってるよ、押すぞ」
急かされた感はあるがチャイムを押した
チャイムは当たり前のように鳴る
少し待った後、中から女の人が出てきた
「はい、どなたでしょうか」
出てきたのは大貫雄大の母親だった
何度か家に来た時顔を見たことがある、部屋までお菓子を持ってきてくれた事もあった
「あら、昴君じゃないどうしたの?こんな時間に」
当たり前の質問だった、それはそうだこんな時間に学生が居るのはおかしいのだ
相手は友人の母親なのだ、疑問に思われるのは当然だった
「えっと、大貫...いえ、雄大君居ますか?」
「え?」
しまった、と思った
何も考えていなかったのもあるがこんな聞き方をすれば大貫に何かあったのかと思われるじゃないか
実際、何かがあったのは確かなんだろうけど、それを悟られるのは今であってはいけないはずだ
「息子は学校に居ると思うのだけれど...」
当たり前だ、普通に考えて学校に居ないほうがおかしい
不信感を抱かせてはいけない、変に思われるかもしれないがここは一度時間を置く事にした
「そうですよね!すみません変な事聞いてしまって、それじゃあまた来ます!」
「あっ...え?」
そそくさと俺達は逃げた、何も考えていなかった俺も悪いがきっと急かした佐藤さんも悪いと俺は思う
「何で逃げちゃうのさー」
佐藤さんは少し不満そうだ
俺には逃げる以外の選択肢は思いつかなかったのだから仕方ないだろう
「夕方にもう一度家まで行くよ」
俺達はこうして本来ならば学園の生徒達
そして大貫雄大が帰るであろう時間まで時間をつぶす事にした