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恋をするということ

 最初は、仙華の友達だからという理由だった。

 けれどすぐに私もその魅力に惹かれていった。


 どこか捻くれていたけれど、一緒にいると楽しい気分になれた。

 暫くすると、仙華は彼のことが好きなんじゃないかと思うようになった。

 同時に、彼も仙華のことが好きなんじゃないかと思った。


 二人が話している時の雰囲気はとても他人が入っていけるようなものではなく、二人だけの世界がそこにはあるようだった。

 私が二人と話をする時は、私のことを意識しているから、話すことも出来るのだけれど。


 それでも私は、いつしかそんな彼のことが好きになってしまっていた。

 仙華が好きな彼のことを。

 私はそのことを仙華に悟られないようにした。

 きっと私は、本当は恋なんてしてはいけない存在になってしまっているはずなのだから。


 仙華としか会話をすることが出来ない私は、仙華が私の言葉を通してくれないと誰とも話をすることが出来ない。

 それはつまり、彼と会話をすることも出来なくなってしまうことになる。

 私の数少ない友人をそんなふうに考えてしまうのは少し胸が痛いけれど、事実だ。

 だから私は彼に対する想いを表に出さないようにしたんだ。


 その後も、二人は少しずつだけど距離を縮めていった。

 それを私は近いようで遠い、そんな距離感で眺めていた。


 けれどある時、私にとって、大きな事件が起きた。

 選択者に、仙華が選ばれてしまったのだ。


 ある程度までは、私が選択する相手を選べていたけれど、それは全てではなかった。

 ある時期から選ばれる者が急激に増えたのだ。

 それはこの世界の終わりへのはじまりでもあった。


 そして私は、仙華に全てを話すことはなく、仙華も私の前から居なくなってしまった。

 あぁ、こうして考えると私の中には罪悪感が沢山詰まっているんだなぁと思う。


 この話も、誰にもしっかりと伝えられていない。

 きっと私はとてもとても、臆病者で、卑怯者だ。


 あの時仙華は私に、二人を頼むって言ったけれど、私はその約束を結局守ることが出来なかった。

 最後の最後まで、自分の中で決めていたことさえも、私はこれから破ってしまう。


 私が仙華に出会っていなければ、二人は今頃、素敵な恋人になっていたのかな。


――これが最後だから。きっと、全て無かったことになってしまうから。

 私は、彼に――昴に私の気持ちを伝えようと思う。


 この考え方もきっと、私の自己満足で、どこまでも私は卑怯者なんだと思う。

 この気持ちを伝えたら、また別の気持ちをこれから背負っていくことになるだろうけど。

 私は、後悔したくないから。

 この気持ちを今、伝えたい。


『ねぇ、昴――私ね、貴方のことがずっと――』

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