訪問
「佐藤さん?」
返事は無い、はぐれてしまったのだろうか
こちらから佐藤さんの姿は見えない
正直、一度はぐれてしまったら見つける自信は無かった
姿が見えない以上、声をあげて佐藤さんを呼ぶ以外方法は思いつかない
ここは人も居る場所であるのだから、あまり大きな声は出したくは無かった
しかしここで佐藤さんとはぐれてしまう事のほうが重要な問題だろう
もう一度、呼んでみる事にする
「佐藤さん、居ないのか?」
「...ん、ごめんぼーっとしてた」
返事が帰ってくるとは思わなかった、それもすぐ近くで
心配した俺のほうが恥ずかしいくらいだ
まぁ、ぼーっとしていたというのが本当なら気にする必要は無いんだろうが
どうにも引っかかる
「何度も呼んだんだが、気付かなかったのか?」
「ごめんってば、ほんとにちょっとぼーっとしちゃってただけだから」
「はぐれたら再開するのは大変なんだ、気をつけてくれよ?」
「もしかして、心配してくれたの?」
「そんなんじゃない」
「ふーん」
少しわざとらしかったかもしれないが仕方ない
これ以上突っ込まれるのは困るし、佐藤さんもこれ以上聞かれたくなさそうだ
ならこの際話題そらしのついでに報告もしておくことにした
「佐藤さん、この辺りで学生を見た人は居ないみたいだ、そもそもこの時間は学校へ行っている時間だろうって」
「まぁ、そうなんじゃないかとは思ってはいたけど・・・」
「そんな返しをしてくるってことは、昴は学生って思われなかったの?」
「え?いや...どうだろうな」
「どう見ても学生に見えなかったんじゃ...」
さすがに学生服を着ていて学生に見えなかったということは考えたくは無い
だがまるで気にしている人は周りには居ないようだ
「ぷっ...あはははっ」
「おい笑うなってっ」
「ごめっ...でもさぁっはっはは」
笑われるのはあまりいい気分では無いんだが
出会ってから初めて、佐藤さんが笑っている声を聞いた気がする
これで姿を見れればなおさらいいんだが、やはり佐藤さんの姿を見る事は出来ないようだ
しかしずっと笑われていて、少しイライラしてきた
さっき思いついた事をさっさと佐藤さんに言ってしまう事にする
「佐藤さん」
「なっなに?」
「もしかして、怒った?」
「いや、別に怒ったわけじゃないんだが、次はクラスメイトの家に行ってみようと思うんだ」
「クラスメイト?」
「あぁ、同じクラスの大貫雄大の家だ」
「分かった、ついていくよ」
「またボーっとして、はぐれたりしないでくれよ?」
「もう、さっきのは別にはぐれたわけじゃないし!」
少し打ち解けたような雰囲気を感じながら
俺たちは大貫雄大の家へと向かう事にした