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貴方に会う為に

 靡く髪は黒く、小柄な体は触れたらすぐに消えてしまいそうなほどだ。

 純白のワンピースを着た姿やそれとは正反対の黒い髪は、夕日で赤く染まったこの場所ではとても目立つ。

 外では雪が降っていたはずだが、この場所では寒さも、暑さも感じられない。

 だからこそ、俺が厚着で、彼女は薄着であっても平気なのだろう。

 この様子を誰かが見ていたらいかにもおかしな状況であることは確かだけど。

 屋上へ来たところで話しかけてきた彼女(恐らく佐藤さん)は、優しく微笑みながら屋上の真ん中に立って手招きをしている。


 このままただ立ち尽くしていても仕方ないので、誘われるがままに近づいていく。

 少し距離をあけて立ち止まると、手招きしていた手を下ろして一瞬だけ悲しそうな顔をした後に、また話しかけてくる。


「ちょっと無理して、ちゃんと顔を合わせて会話が出来るようにしたんだけど……変かな」

「……変じゃない、むしろ可愛いんだが、本当に佐藤さんなのか?」

「それ、どういう意味かな……でも、うん、私はちゃんと、昴の知ってる佐藤さんだよ」


 そういうと佐藤さんは俯いてしまった。顔が赤いようにも見えるけれど、きっと夕日のせいだ。そう思い込むことにした。

 少しの間俯いていた佐藤さんだったが、急に顔を上げたと思うと、両頬を手のひらで思い切り叩いた。

 まるで破裂音のような派手な音を響かせた後、今度は頬を抑えて悶えていた。加減を間違えたようだった


「なにしてるんだ?」


 まるで空回りしているようにも見える佐藤さんを見ながら呆れ気味に言うと、佐藤さんはコホンとひとつ咳をして、こちらを見る。


「な、なんでもないから。大丈夫だから」

「そ、そうか」

「とにかく、私は昴が知っている私だから、今はそれで納得してくれるかな」

「……分かった」

「良かった。それと、私のことを可愛いって言ってくれたの、嬉しかったよ?ありがとう」


 数日間、まともに表情を見ていなかったせいか、佐藤さんがその時していた笑顔はとても眩しく感じられた。

 顔がとても熱くなっているような気がしたけれど、これも夕日のせいにしてしまおう。

 この場所はそれ程に照らされた夕日によって赤く、赤く染まっている。

 それが何を意味しているのかは、分からないけれど。

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