夜、寂しさ覚えて
明日に備えて、一旦自宅に帰ることにした。
いくらなんでも夜まで外に居ては凍えてしまう。
それこそ、明日また佐藤さんに会う前に、力尽きてしまうことだろう。
自宅までの帰り道、公園に寄った。
ここは確か、佐藤さんと作戦会議というか、昼食を食べた程度の場所だ。
あの時はおにぎりを佐藤さんと食べたはずで、佐藤さんは――そう、具は鮭が好きだと言っていた。
まさかその後、佐藤さんと一緒にブランコに乗ることになるなんて思ってなかったけれど、あの時の佐藤さんはとても楽しそうだった。
「……今この瞬間、佐藤さんも頑張っているんだもんな」
大分疲れていたけれど、来た道を振り返り、走りだす。
――同時に、顔面から盛大に雪に倒れた。
……痛い。
気合で立ち上がり、目的の場所へと今度は転ばないように、進む。
……目当てのものを手に入れた俺は、自宅へと帰ってきていた。
さすがに生はどうなっているのか分からないので、缶に入っているものにした。
自分用は、まだこの家に残っているし、なんとかなるだろう。
軽く食事を済ませたら、今日はもう休んでしまうことにした。
動いている間は良かったが、見えなくても佐藤さんの存在は、誰も居ないことに対する寂しさを和らげてくれていた。
今はとても、寂しい。
ベッドで横になると、静寂が耳に痛いほどやってくる。
たったの数日間だ。佐藤さんと一緒に居たのは。
それでも、その数日間で自分の中の佐藤さんという存在は大きくなっていったのだろう。
そう考えなければ、この感情は説明出来ない。
明日はきっと、大切な日だ。
自分自身にとって。そしてきっと、佐藤さんにとっても。
怖くないと言ったら、嘘になってしまうだろうけど、その時出す答えに後悔しないようにしよう。
それがせめてもの、誰もいなくなってしまった、おかしな世界の中で、俺のことを守ってくれていた佐藤さんに対する恩返しになると信じて。
だから今は眠ってしまおう。
知らず知らずのうちに力を込めてしまっていた手足から力を抜き、軽く深呼吸をする。
すると、あっさりと眠気がやってくる。
「……おやすみ」
誰も居ないこの家で一人呟くと、静寂の中、眠りについた。