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選択肢

「残り時間ってどういうことだ?」


 あまりにも自然に佐藤さんが言った言葉に、思わず聞いてしまう。


「えっと――そうだね。簡単に説明すると、今、昴に残されてる時間は、ほとんど無いような状態なんだよ」

「そうなのか」

「あれ、思ったよりも反応が薄い」

「どちらかというと、いまいち実感が湧かないんだが」


 なんとなく、言おうとしていることは分かるのだ。

 自身に残されている時間が少ないということはつまり、俺自身も今まで消えていった者達と同じように消えるということだろうと。


「今までは選択肢の放棄に加えて、私が少し無理してごまかしていたんだけど、この世界に残っている人間が昴しか居なくなった時点で、いつバレてもおかしくない状態だったの」


 今この場にいることができているのは、未だバレていない状態であるのか、それともただ見逃されているだけなのか。

 この世界をいいように終わらせようとしている神様とやらが、何を考えているのかは分からない。

 けれど神様というのはどの時代も、基本的に理不尽な存在なんだろうと思う。


「その……なんだ、悪かったな覚えてないけど、ありがとう」

「どうして、謝るの? それに、お礼なんて」

「いや、わざわざ俺なんかを助けるために、無理してくれてたんだろう?」

「やめてよ、私はそんなに良い人じゃないよ。私自身が、貴方を消し去りたくないから、貴方ひとりだけを選んで残しただけなんだから」

「それでも、ありがとう」

「……うん」


 この場に似つかわしくない、少しだけ照れくさいような空気が流れていた中、学園中に耳障りなチャイムの音が鳴り響く。


「なんだ? 今までチャイムなんて鳴らなかったよな」

「少し、のんびり話をしすぎたみたい、チャイムが鳴ったから、もう私は私の役目を果たさなくちゃいけない」


 与えられた使命、そして、その役目。

 それは、選ばれた者に、選択肢を与えるということ。

 そして、残された者は、川口昴――つまり、俺唯一人だけだった。


「川口昴、貴方にもう一度だけ、選択肢を与える」

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