続く道は幻想
とりあえず、佐藤さんを家で休ませている間、昨日開いていなかったスーパーへ向かう。
外に降り続ける雪は強くもならず、また弱くもなりそうになかった。
誰も通らない道を歩きながら、もしかしたら、もうこの近くには自分達以外の人間は存在していなくて、そのせいで店も開いておらず、何処へ行っても静かで、寂しい場所であるのかもしれないと、そう思った。
「……まぁ、予想はしてたけどさ」
見上げるのは目的の場所であるスーパーの看板、開かなくなってから経った時間は長くはないはずだというのに、とても寂しさを感じる。
見た目が寂れているように見えるのは、気分の問題だろうか、それともこの環境のせいだろうか。
もしかしたらなんて、そんな自分でも信じきれない考えで、入り口へ近づくが、自動ドアはセンサーが反応しないせいで開かないし、電気が通っているのかさえ分からない。
目の前のドアには少しだけ隙間が開いているが、店内の照明もついていなく、ただ暗いという印象だけが目についた。
仕方がないので、昨日と同じようにコンビニを巡ることにする。
この近辺にはこの場所以外のスーパーが存在しないのだ。
ただ、コンビニに関しては、少し歩けば、ある程度は見つけられる範囲にはある。
コンビニで商品を買うと多少お金がかかってしまうのもあって、普段はスーパーで済ませているが、こういった、スーパーを利用出来ない時には便利かもしれない。
と、思っていたのも束の間で、近場にあるコンビニを全て巡った結果、何処も開いていなかった。
昨日はなんとか、開いているコンビニを見つける事が出来たのだが、今日はそのコンビニさえ閉じていた。
「まさか、全滅とは思わなかった……」
「割と本気で人が居ない事を疑ったほうがいいかもしれないな」
雪が地面に積もる音が聞こえるほどに、周囲は静かで、他には自分の心臓の音や、コートの擦れる音、それに風の音、なんてものくらいしか聞こえず、考えれば考えるほど、自分以外の人が発する音が恋しくなっていくのであった。
こうなれば更に遠くの場所にある店を探さなければならない、そんな使命感……というか、意地になっていただけかもしれないが、店を探す範囲を広げようと考えた。
ならば、佐藤さんを待たせるわけにも行かないので、足早に、歩みを進める。
というか、すでに十分待たせすぎている気もするが……。
歩きながら、もう、近辺だけではなく、世界そのものから取り残されたような、そんな感覚がしていた。
不安を募らせながらも、歩き続けると、記憶の片隅にあった、店が見えた。
おぼろげな記憶は、まるで遠い過去のようで、モヤがかかってしまっているが、感覚を頼りに、やっと辿り着くことが出来た気がした。
遠くに見える店は、隣町のスーパーだった。
といっても、ほんの少しだけ、境を越えた場所にあるだけであって、ほとんど変わらない場所ではあるのだけれど。
そして、いざそのスーパーへと向かおうと、歩きだすと、まるで、自分の意志とは関係無いもので意識の糸を切られてしまったような感覚で――プチン――と糸が切れ、目の前が白く染まり、やがて黒くなっていった。