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おとしもの

「それで、どうする?今回も、私が開けようか?」

「あー、そうか...」


 正直、佐藤さんに鍵を開けてもらうのはあまり気乗りしなかった。

 どうしてだろうか、違和感が強くやってきて、更にそこへ罪悪感が重なるのだ。

 そんな感覚もあって、ひとまず佐藤さんの言葉をはぐらかしたあと、まずは自分でドアノブを回すことにした。


「あれ、これ・・・」

「どうしたの?」

「鍵、開いてるんだが」

「えっ」


 この家の鍵はかかっていなかった。

 家の入り口はすんなりと開き、いつでも入れる状態だ。

 そんな予想していなかった事に驚き、その場で固まってしまった。

 それは佐藤さんも同じだったようで、まるでこの瞬間、時間が止まったように静かだった。


「えっと、誰かいませんか?」


 いつまでも固まっているわけにもいかないので、家の中に入る前に声をかける。

 しかし、そんな言葉に返ってくる声はなく、ただ静かなまま、発した言葉は家の中へ空虚に響いた。


「返事は無し...か」

「ここから見た限りでも、家の中にあるのは、元から備わっていたものくらいだし、やっぱり仙華の家の人も...」

「それはまだ分からない、けど、中に入って調べるしかなさそうだな、寒いし」

「そう...だね」


 そう言う佐藤さんの声は暗く、落ち込んでいるのが伝わってきた。

 それでも、このまま立っているだけでは時間ばかりが過ぎていく、今この時にも、消えていっている人がいるのかもしれない、根拠は無いけれど、何かに急かされている感覚だけはあるのだ。

 そうでなくとも、外は寒く、このままでは風邪をひいてしまう、この状況下で風邪をひくわけにはいかない。


 家の中は、外と同じように、白く塗装された壁がほとんどだった。

 一部が木の色である以外は、ほとんどが白く染められていた。

 それは一見綺麗に見えるものの、長くいればいるほど、眩しく感じられそうで、あまり居心地が良い場所だとは思えなかった。


 「じゃあ、とりあえず雄大の家の時と同じように、手分けして探そうか、今回は結構な広さもあるし...」

 「ん、分かったよ」


 一度全体をまわってみても良かったのだけれど、手分けして探すのを先にした。

 佐藤さんは上の階を、そこには黒百合さんの部屋などがあったらしく、もしも何か残っているならそこかもしれないと思った、けれど入るのは友人であった佐藤さんがいいだろうと思い、探してもらうことにした。

 そして残っていたのは下の階だった、ここにはリビングやキッチン、客間などがあった。

 と言っても、家具が置かれていない家の中を見て回るのはさほど苦労は無く、比較的広い部屋の中でも隙間などの見えない部分を見逃さないように探すことが重要だった。

 雄大の家で一度隅々まで見て回ったのもあって、手早く進めていく、見逃しが無いように。


「ん?これは...」


 しかし、見つけたものは実際に見えない部分などにあるわけではなく、床にひっそりと落ちていた。

 ただひっそりと、けれどしっかりと見なければ見つからないような存在感だった。

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