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黒百合仙華と佐藤さん

「それじゃあ、まずは私と仙華が出会うまでの話だね」


 そう言って、彼女は語り始めた。

 

「私と仙華がはじめて会ったのはね、大体今から1年前くらいのことで、私が他人から見えない姿になってからはじめて声をかけられた相手だったんだ」


「随分最近なんだな」

「そうだね、それまで声をかけられた事もなければ、私の姿を見る事が出来る人もいなかったから」

「...すまん」

「いいよ、気にしないで、それに今は昴っていう話し相手だって居るんだから」


 佐藤さんは少し寂しそうな声で返事をした後、中断された話しの続きを語る。


「ん...と、まぁ、なんで話しかけられたかって言うと、昴も通ってるあの学園の廊下で挙動不審に歩いていた私を怪しんだのか、心配したのか、今としては分からないけれど、どうしてか私の姿を見る事が出来たらしい仙華が話しかけてきた」


「その時は、突然でびっくりしちゃって、その場から逃げてしまったんだけど、自分が消えてしまってから、はじめて会った自分の事を見る事が出来る相手だということでとても嬉しく感じたのと同時に、あれは本当に自分に声をかけていたのだろうかっていう不安もこみ上げて来てどうしようもなくなったの」


「そして次の日、我慢出来なくなってもういちど、学園まで会いに行ったら、当然とでも言うような表情で、私に話しかけてきたんだよ?昨日の不安はなんだったのってくらいな勢いで、今まで人と関われなかった期間の分だけ、話しちゃって、あの時はきっと途中から仙華は引いてたと思う」


「だけど、仙華は私が予想していた以上に、お人好しなのか、天然なのか、こんな私と仲良くしてくれたんだよ」


「それこそ、私が仙華にしか見えない存在だって知ったら、きっともう仲良くしてくれないと私は思っていたのに、気づいても怖がったりしないどころか、泊まる場所が無い事を知った途端、仙華の家に泊めてくれたんだから、やっぱりお人好しなのかもしれないね」


 ここまで話したところで、佐藤さんはひと息ついて、話す前に用意していたお茶を飲んでいた。

 途中から黙って聞いていた俺も、このタイミングで喉を潤す。


「ふぅ、とりあえずここまでが、私と仙華が出会った経緯だよ」

「なんというか、随分と優しい子だったんだな」

「...そんな仙華を他人みたいなことを言われると、少し気に食わないけれど、我慢してあげる」


 ここまでわかりやすく機嫌が悪くなるのは貴重なのではないだろうかと思ったが、それを口にはせず、今はただ、佐藤さんの言葉に甘える事にした。


「それで、続きはどうなったんだ?」

「...そうだね、ここからが、昴と、大貫君の事を私が知る話になるんだけどね」

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