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幼なじみ

 恐らく、もうこの場所には帰ってこないであろう親友。

 そして壁に書かれていた自分宛に書かれた内容は、本文よりもずっと短く書かれていた。


『親友へ。

 まずはこんなわかりづらい場所に書いてる事を謝りたい、申し訳ない。

 そして、何も言えずにいなくなってすまん。

 けどな、お前も悪いんだぞ?なんでこんなタイミングで家に居なかったりするんだよ、最後くらい会わせろよ...

 あぁ...そうだ、別に見られていても構わないが、あいつにはこのメッセージ、見せてないだろうな?

 もし見てるんだったら、この後、恥ずかしい事も書くから見ないでもらいたいな。

 俺たち、いつも3人で一緒だったからな、このメッセージを見てたっておかしい話じゃないんだけどさ。

 いいか?お前があいつのこと、好きだって、俺は知っていた、気づかない振りをしてたんだ。

 そして俺もあいつのことが好きだった、どうしようもないほど好きだった。

 明るく元気で、いっつも笑顔で、昔から3人一緒で、これからもずっとそうなんだと思ってた。

 でもな、俺はもうお前らの前から消えてしまうんだ、これはもう、自分自身でも嫌というほど感じている。

 だから、お前に譲るよ、きっと、あいつもお前のこと、好きなんだと思う。

 3人一緒にいても、俺よりもお前のほうに視線が向いてる事が多かったし、間違いないさ、ずっとお前らのそばにいた俺が保証する。

 俺の身に起きている事も含めて、これから、何が起こるか分からない。

 だからこそ、お前があいつを守ってやってくれ、きっともう、幼なじみ3人組が揃う事はないと思うから。

 なぁ、俺の唯一人の親友!男なら、女の1人くらい、守ってやれよ!』


『あぁ...もうすぐこの家に俺の親が帰ってくる時間だ。

 もしかしたら俺の事を思い出してるんじゃないかって考えもあるんだが、まぁ、それはこの際いいか。

 じゃあ、俺は先に行ってるからさ、お前はすぐに追いかけて来たりするんじゃないぞ?

 追いかけるんなら、2人揃って、最後まで生き抜いてからまた再会しようさ。


 ...じゃあ、またな、親友』



 全ての話を読み終えると、自分の中で、色々な感情が心の中で渦巻いているのを感じる。

 その中でも、自分の中で抑えきれず、言葉になって溢れでた感情があった。


「あいつって...誰なんだよ!」

「っ...びっくりしたぁ...」

「あっ...ごめんな、佐藤さん、でも、抑えきれなくて、つい」

「...いいよ、別に、何か大事なことでも書かれていたんでしょう?でも、次からは急に大声をあげないように気をつけてね」

「あぁ...うん」


 思わず、叫んでしまった、しかし、なんでこんな重要な文章で、名前を書いていないんだ...思い出せない俺が悪いのか?

 話の内容では、幼なじみと書かれていた、確かに大貫雄大とは昔から一緒に居た幼なじみだ。

 だが、もう1人...

 もう1人はいったい誰なんだ?

 親友の残したメッセージを読んで、自分の記憶の中で欠けている部分がまたひとつ、見つかったような気がした。

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