痕跡
大貫家へ着いて、誰も居ないその場所へ佐藤さんと入る。
中は前回来た時よりも寂れて見えた、ほとんど時間は経っていないはずなのに。
家の中を調べるといっても、見える範囲は前回ほとんど調べたので、今回は普段は見ない場所を調べる事にした。
さすがに家の中なら平気だと、佐藤さんが言ったので、手分けして調べる事にする、細かな場所を調べる以上、時間を短縮出来るのはありがたかった。
台所の収納場所を調べると、ほこりが溜まっていて、食器や、調理道具を入れていたようにはまるで見えなかった、奥にも特に何もなくて、まるで生活感を感じられなかった。
玄関の棚には、靴の跡が残っていた、跡のまわりにはほこりが溜まっていた、それこそ、使わない靴が置きっぱなしにしてあったのだろう、この場所に来て、人が住んでいた事を、ようやく感じられた。
ここには人が住んでいたんだ、と思えただけでも救いがある、それ程に今は他に情報が少ないのだ。
他にも、洗面所や風呂場など、友人の家で普通は調べない場所を調べたが、それ以上何も見つける事が出来なかった。
1時間ほどかけて、じっくりと調べたところで、やはりこの家には手がかりは特に何も残っていないのだろうか、と思い始める。
少し休憩するか、と思い始めていた時、家の中の一室から佐藤さんが呼んでいた。
「昴!ちょっとこれ見てよ」
「なんだ?」
中々に焦った声だったので、慌てて佐藤さんの呼んでいる場所へ行く。
そこは和室にある、押入れの中だった、暗くてよく分からなかったので、ライトを照らすと、押入れの中全体が見えた。
佐藤さんが言っていたのは、正確には押入れの中にある壁だ。
その壁には、大貫雄大が書いたであろう、メッセージが残されていた。
「こんな目立つ書き方してるのに、なんで気付かなかったんだろう」
「まぁ、いつだって探しものを見つける時はそんな感想が出るさ」
それにしても、どうしてこんな場所にメッセージを残したのだろうか。
何にしても、読んでみない事には、伝えたい事は分からない。
大貫雄大という男が、何を残したのか、今、隣にいる佐藤さんとともに知ろう。
読み始める前に、少しだけ天井の低い押入れの中で、ひとこと佐藤さんに声をかけた。
「...読むぞ?」
「...うん」




