梅と鮭
粗方周辺の家を訪ね終えた後、もうお昼時だという事で、少しお腹も空いていた事もあり、以前行った公園で昼食をとることにした。
昼食はスーパーを後にする時、何も買わないで出るのも気が引けたので、その時に買ったおにぎりを二人で食べることにする。
公園にある適当なベンチに座りながら、おにぎりの入ったスーパーの袋を開けると、佐藤さんが話しかけてきた。
「ねぇ、昴はおにぎりの具は、なにが好き?」
「そうだな...あえて上げるなら梅かな」
「そうなんだ、私は鮭だよ」
「...お互い普通だな」
「なんていうか、面白みの欠片もないね...」
身のない会話をしつつ、お互い好きな具の入ったおにぎりを手に取り、食べる。
まぁ、意外性のある物を上げられても反応に困るが、今回買ったのはスーパーなわけだし。
というよりも、いきなりこんな話題が出てくるということは、余程会話が無かったのが辛かったのかもしれない。
自分があまり喋らないのもあって、普段の二人の会話というものが少ない、もしかしたら佐藤さんはもっと話をしたいのだろうか。
今まであまり女性と話をしてこなかったのもあって、この手の状況にはあまり自身がない。
それでも佐藤さんと数日間一緒に過ごした事で、少しは慣れたつもりでいたのだが、そうでもなかったようだ。
昼食を食べ終えると、元々お昼用に買ったつもりではなかったのもあって、昼食の量が少し少ない気がしたが、佐藤さんも特に気にしていないようだったので、これからどうするかを決める事にした。
「最後に、大貫家の中をもう一度探ろうと思う」
「最後?」
「ああ、最後だ、これが終わったらもうこの通りには来ないと思う」
「それで...いいの?」
「もう、誰も居ないみたいだしな、他の場所を探った方がいいだろうよ、それに探索をしないだけで、通る事くらいはあるだろうしな」
「うん...でもそれは探索が終わってから決めてもいいんじゃない...かな」
「あぁ...そうだな」
少しだけ佐藤さんに言われて弱気になってしまった。
何にしても大貫家を探索してからだ、そこにさえ何も無ければ、きっと何も無いのだと感じる。
他の家へは入らずに、大貫家だけ侵入するのも何故か気が引けるからだ、大貫家に入るのも良くはないだろうが、他の家へ入るのは、本当にどうしようもなくなってからだ、うん、それでいい。
それから、ゴミを片付けてから公園を後にして、大貫家へ向かった。




