誰もいない道
大貫家があった場所まで来たのは良いのだが、昨日と同じように、人の気配は感じられない。
自分で提案したのにも関わらず、正直言ってここから何かが見つかるとはとても思えなかった。
けれどそれは今、この場所まで来たから思うことであって、ここへ来るまでは何かがあると確信があった。
いったい、その感情がどこからやってきたのか、何故ここへ来てどこかへいってしまったのか。
ともかく今すぐこの場所から立ち去りたい気持ちが強い、これほどまで自分の心が弱いことを今まで知らなかった。
「せっかく来たんだ...」
もう、暫くこの場所へは来られないかもしれない、体がこの場所を拒絶しているのを感じる。
それならやはりこの周辺を調べるべきだ。
一度気を抜いてしまえば、膝から崩れてしまいそうだとしても。
さて、と、気合を入れなおそうとしていたところで「この近くって、誰も住んでないの?」と、横から佐藤さんが話しかけてきた。
そんなはずはない、それなりに大きな住宅地だ、そんな事があるのならよほどのことだと思う。
けれど最近、この場所を通る時は、滅多に人に出会わなかった。
まさか、という考えが思い浮かぶ。
感情を抑えきれないまま、事実を確かめるために、一軒ずつ、訪ねて行く。
チャイムを押して待って、もう一度押して、来なかったら次の家へ。
そんなことをしばらく続けていたが、どの家もチャイムに応える住人は居なかった。
「この家も居ない?」
「みたいだな...なんていうか、ここまでくると不自然すぎて笑えてきそうだ」
「まさか全滅とは思わなかったよ...」
確かにまさか、とは思っていた、思っていたけれど本当に誰も居ないなんて思わなかった。
誰か一人くらいは居るだろうという考えだったのだ、そして話を聞くつもりだった。
そういえば何を聞くか考えていなかった、あまりにも考えなし過ぎる。
これでこの通りには自分たちが調べた場所はほぼ確実に誰も住んでいない事が明らかになった。
大貫家だけが居ないものだと思っていた所で追い打ちをかけられたような気分だ。
どこもかしこも人が居なくなっていっている、自分達の知らない所で何が起きているのだろうか。