隠し事
外に出るとしても、家を出ればすでに寒いだろう、ということで防寒着を用意することにした。
自分が着る分は部屋のクローゼットにしまってあるだけなので良いが、佐藤さんの分をどうするか。
考えた結果、もう一着持っている自分の分を渡すよりも、母親の持っているコートを着てもらう事にした。
コートを佐藤さんに手渡すと、「私が使っても、いいのかな」と少し遠慮している様子だったが、コート自体は気に入っていたようで、少し説得するとそれ以上は何も言ってこなかった。
外へ出ると、昨日と同じ季節だとはとても思えない寒さを感じた。
二人して特に何も考えずに外へ出てしまったせいで、行く場所が決まっていなかったのもあり、とりあえず人が集まりそうな場所へ行くという話になった。
しかしいくら考えても、人が集まりそうな場所が思い浮かばない、それなりに長い期間この町に住んでいるはずだというのに。
それは佐藤さんも同じだったのか、唸り声のようなものをあげながら悩んでいるようだった。
結局、何も思い浮かばないまま時間が過ぎてしまいそうだったので、近くのスーパーへ行く事を提案した。
そこなら、沢山の人が集まることはなくても、ある程度の人は集まる場所だ。
しかし、佐藤さんが突然、「本当に、そこでいいの?」なんて聞いてきた。
何故そんな事を聞いてくるのかは分からなかったけれど、そこ以外に思い浮かぶ場所は無かった。
当の本人も、他に案があるわけでは無かったようで、それ以上聞いてくる事はなく、スーパーへ向かう事になった。
昨日や一昨日も思った事だが、外で歩いていても、まるで人とすれ違わない事に違和感を感じた。
学校の生徒が居なくなった事や、大貫家がそのまま消えてしまった事と関係があるのだろうか。