代償の欠片
味噌汁のおかげか、少しだけ体と心が楽になった気分だ。
食べている姿を見て佐藤さんは満足したのか、「じゃあ、私も食べるね」と言って、自分の分をお椀に入れて食べていた、そこでもやはりお椀は浮かんで見えた。
二人とも食べ終わった後は、昨日のように倒れても困るということで、今日は風呂に入って早めに休むことにした。
昨日入らなかった佐藤さんもさすがに耐え切れなかったのか、「申し訳ないですが、シャワーをお借りします...」と言ってきた。
正直、どうしてそこまで下から話をしだしたのか分からないが、とりあえず「どうぞ」とこちらもかしこまって返事をした。
その後、佐藤さんがシャワーを浴びた後、自分も汗を流した。
ふと思ったのは、浴槽にお湯を張ってもよかったかもしれないことだ、明日は佐藤さんに相談してみようと思った。
さて休むか、となった所で、寝る場所はどうするかという問題があがった。
例え姿が見えなくて、体に触れる心配が無いと言っても、相手は女の子なのだ、これは大きな問題だった。
しかし佐藤さん曰く、「この体になってからは、眠ることは出来るけど、眠らなくても平気なんだよ」という事だった。
それには驚いたけれど、個人的な気持ちとしては明日も何があるのか分からない以上、体を休ませてあげたい気持ちもある。
それを伝えると、「分かった」と返してきた、気持ち悪いくらい素直だ。
自分の部屋に寝かせても良かったのだが、結局、今は空いている母の部屋に寝てもらう事にした。
母の部屋に佐藤さんを案内して、自分は自室へと向かう。
部屋に入ると、途端に静けさを感じた、思えばこの二日間、起きている間は常に佐藤さんと一緒に居た気がする。
自分はこんなにも弱い人間だったのかと少しだけ考えてしまったが、すぐに考えるのをやめた。
その代わり、明日はどう行動するかを考えた、けれどそれも考えれば考えるほどにまとまらなかった。
ベットへ横になり、目を閉じるとすぐに眠気がやってきた。
眠ってしまう直前、佐藤さんの眠らなくても平気な体、という言葉を思い出した。
しかし、一度やってきた眠気に抗う事は出来ず、その日は眠りについた。