侵入
結局あの後、時計の針が動く事はなく、針の動く理由も分からなかった。
このままでは謎を解いている間に、日が落ちてしまうと考えた結果、日が落ちきってしまう前に、大貫の家へ、もう一度行く事になった。
と、そこまでは良かったものの、やはり大貫の家は不在だった。
普段なら偶然や、色々な事情で居ないというように考えられるが、この状況であるせいもあって、ああ、また心配ごとが増えていく。
「一体どうしたんだろうな、一応昨日約束したはずなんだが」
「うん...」
「せっかく何か手がかりが掴めると思っていたっていうのに」
「うん...」
一応佐藤さんに話しかけているつもりだけど、肝心の佐藤さんは上の空、というよりは何か考えているように見えた。
とはいえ、今日会えないのは想定外だった、入れ違いになった可能性もあるわけだけど、昨日の事を考えるとあまりなさそうな事だ。
「よし!」
「え?」
突然佐藤さんが声をあげた、いつの間にか静かになったり、突然声をあげたり、一体何だというのか。
「中、見てくるよ」
「どこのだよ、え?まさかこの家の中じゃないだろうな」
「そうだよ?」
「マジか...」
佐藤さんは大貫家の中を見てくると言った、いやいや、一日くらい居ないのはおかしくはないはずだ、だというのに中へ入るのは空き巣のようなもので、不法侵入だ。
そんなことを考えているうちに、玄関の扉が開いていた。
...いやいや何で開くんですかね。
「おいおい、大丈夫か?」
「...昴、ちょっと来て」
「ん、どうした?」
まだ玄関を開けただけだというのに、佐藤さんは呼んできた、やはり一人では心細いのだろうか。
色々な事を関係無しに、人の家に無断で入るというのはダメだと思うんだがな。
心苦しさを感じながらも、渋々玄関へと足を踏み入れる。
「で、一体どうしたんだ?」
「とにかく、昴も見て」
「...え?」