白い猫
学園内をひと通り調べた後、次はどうするべきか考えていた所で、外に何か動く白い物を見た。
それは、今日になってから、はじめて見た動いている動物であったせいもあってか、とても気になった。
その事を佐藤さんに伝えると、「追いかけてみようよ」と言ってきたので、こちらも同意し、追いかける事にした。
外に出た瞬間、校舎の中は日陰になっていた為、気にならなかった日差しが肌に突き刺さる。
「来る前は気にならなかったのに、やっぱり暑いね」
「そうだな、今も気にしている暇はないけどな」
こうしている瞬間にも先ほど見た白い動物は校舎脇へと足を進めていた。
ここから見る限り、犬か猫だとは思うのだけど、この目で確認するまでは気にしない事にした。
校舎脇にはそこそこ大きな木が一本だけ生えていて、校庭の方に太陽が出ていない限り、陽が入ってこない場所になっていた。
1日のほとんどが日陰であるその場所で、1匹の白い猫が眠っていた。
「こんな湿気のありそうな場所で昼寝するなんて、変わった猫もいるもんだな」
「少しジメジメしてるけど、涼しいし、良いんじゃないかな、別に土が湿ったりしている訳じゃないみたいだし」
言われてみるとそれほど湿気がありそうな感じではなかった。
土には薄く草が生えているものの、触ってみると湿り気のある土では無い事が分かる。
「思ったよりは快適な場所なのかもしれないな」
「そうだね」
二人して良く分からない内容の会話をしていると、会話声がうるさかったのか、寝ていた様子の猫が起き上がり、こっちに向かってきた。
起こしてしまったのは悪いとは思うのだけれど、何故こっちに向かってくるのか。
普通ならば別の場所へ移動したりするのでは、と思うのは偏見だろうか、それともこの猫が特別なのか。
とうとう目の前までやってきたその猫は、持っていた鞄へガリガリと爪をたてた。
中身を昨日から変えていないはずの鞄には食べ物なんて入っていないとは思ったが、あまり爪をたてられてボロボロにされても困るので、一応中身を確認してみることにする。
「ん?なんだこれ」
「どうしたの?」
鞄の中には、入れた覚えのない、手のひらサイズの透明な袋が入っていた。