光
何故だろうか、体がすごく痛い
今、自分は何処にいるのだろう?
体は動くだろうか、声は出せるだろうか、光は見えているだろうか。
「...あー、声は出るな」
ひとまず何も見えない状態ですることとして、声を出してみる事を選んだ
目は開いているつもりだが、真っ暗で何も見えない
手と足は動かしているつもりだが、地面があるのかさえ分からない。
「誰か、居ないのか?」
声が出せるのなら、と自分以外の誰かを探す
そもそもここは現実なのかだとかそんな事も考えるが、だからといってどうにかなる訳でもないのだ
夢なら夢で、それでいい。
それから少し経つと、何も無い暗い空間に光が現れた
それは人の形なのか、それとも別の何かなのか
少なくともこんな事が起きる時点で夢なのは確かだ。
「...れ...で」
目の前にある光から、何か聞こえてくる
それは途切れ途切れで、上手に聞き取る事が出来ない。
「なんだ、なんて言ったんだ?」
夢だとわかっていても、つい聞いてしまう
光から目を離さないようにしつつ、手足を動かそうとしてみるが、やはり動いている感じはしない
あくまでもこの場所から動く事は出来ないらしい。
「忘れないで」
「忘れ...?何を?」
問いかけに返事は返ってこない
声色はどこか機械的で、男なのか、女なのか分からなかった
ここではあくまで光に包まれた何か、もしくは光そのものだと思ったほうが良さそうだ
そしてその光は確かに、『忘れないで』と言った。
これが夢だとして、何故こんな内容の夢を見るのかが分からない
そういう内容だからこそ夢なのかもしれないけれど。
ただ一言、『忘れないで』と言った光は、ゆっくりと遠ざかっていく
何故だか追いかけようとした、ただその時は追いかけるべきだと思ったから
けれど当然の事のように体が前へ進む事は無かった
それ以前に前へ進んでいるかどうかさえも分からなかった。
そんな事をしている間にも、光は遠く、消えていく
届かないだろうと思っていたけれど、完全に消えてしまう前に手を伸ばす
いや、実際には手を伸ばそうとはしたのだけれど、手が動いたのかどうかは分からなかった
それでもその瞬間、光は弾けて、辺り一面が光に包まれた。
目の前が大きな光によって、霞んでいく
もうあの光が何処にあったのかさえ分からない
少しずつ、体の感覚も戻ってくるような、そんな感じがする。
そして、きっと夢が覚めるんだろうな、と思う
そういえば、昨日はいつ眠ったのだっただろうか...
そんな事を夢が終わり、目が覚めるまで考えていた。




