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予定

大貫の家から離れた後はそこから数分の距離にある公園まで来ていた

公園は何かの木で囲われている一般的なものだったが、中に入ってみると遊具は少ない印象を受けた

昔はもっと遊具が置かれていたと思う、いつの間にか撤去されたのだろうか

まだ明るいのにもかかわらず子供の一人も居らず、傍から見たら公園の中に居るのは男一人だけに見えることだろう

実際には二人居るわけだが、そもそもここは何故か住宅街のわりに人通りが少ないのだから見られる事も無いのかもしれない

ここにはベンチの他にブランコがあったので、とりあえずそれに座りながら佐藤さんに話しかける


「佐藤さんは、雄大が帰ってくると思う?」


佐藤さんがどの方向に居るのかは分からないけれど、とりあえず聞こえてはいるだろう


「帰ってくるといいとは思うけど、私は正直帰ってこないんじゃないかなって思うよ」


佐藤さんはあまり良い方向に考えているわけではないらしい

誰も居なくなってしまった学校を見る限り、そう思うのも無理は無いのかもしれない


「雄大が帰ってきたら、俺も少しは安心できるしヒントも得られるはずだから、帰ってきて欲しいんだよな」


少しわざとらしい言い回しになってしまったが、結局は友達が心配なのだと気づくと少し恥ずかしかった

それを察したのかは知らないが、佐藤さんは俺の言葉には何も返さなかった

それでも無言が続くとどうすればいいのかわからなくなってくるもので

座っていたブランコを漕いでみることにした


「おっ...おぅ!?」


声は真上から聞こえてきた、どうやら佐藤さんは一緒のブランコに立ち乗りしていたようだった


「い...居たのか、すまん」

「いや、私のほうこそ、なんていうか...ごめん」


とりあえず謝りはしたが、まさか二人乗り状態になっているなんて予想出来るわけがない

さっきまで声は横から聞こえていたわけだし、彼女の姿は見る事ができないのだ

ここに来てから佐藤さんとは気まずい状態だ、彼女だってきっと何か考えている事もあるんだろう


「佐藤さん...ブランコ、もう一回乗ってくれないかな」

「...いいの?」

「いいよ、ほら早く」

「...うん」

「乗った?」

「乗ったよ」


乗ったのを確認すると、ゆっくりとブランコを漕ぎ始める

やがて勢いをつけたブランコは大きく揺れる


「すごいね!こんなに高くなるまで漕いだ事、今まで無かったかも!」


強く漕いでも怖がったりする様子は無いようだ、むしろ興奮しているようにも聞こえる


「...あのさ!」


勢いを緩めないようにしながら、思い切って佐藤さんに声をかける


「どうしたのー?」


すぐに返事が返ってくる、さっきまでの空気が嘘のようで、少し嬉しい


「さっきと言ってる事が違うって思うかもしれないけれどきっと雄大も学園の皆も帰ってくるし、

佐藤さんの姿も見えるようになると思うんだ!こんなに楽しい気持ちでブランコを漕いだ事なんて今までなかったんだから!」

「ふふっ、なにそれ!」


我ながら大それた事を言ったもんだと思う、しかも後半の理屈はわけがわからない

だけど、実際に思ってしまったのだからしかたない

みんな、みんな、上手くいくのだと、その時は本当に思ったのだ


「分かった、信じるよ!今、この瞬間、私はこんなにも楽しいんだから、昴のこと、信じる!」

「もちろんだ」


ブランコとベンチしか無い公園ではあったが、そのとき、俺達は全力で楽しんでいた

何もかも、上手くいくのだと、そう信じてやまなかった

もうすぐ学園生達が帰ってくる時間だ、きっと皆何事ものなかったように帰ってくる

そう信じて、俺達はもう少しだけこの時間を楽しむことにした...

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