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文語詩 その2

作者: 鱈井元衡

死にぬる者をばいかに讃へども 死にし者や之を喜ぶ


仇なる者を誅せりとて 死にたる者や之を望む


名を挙げんと努むる者も 名より逃れんと望む者も


そのからだは つひには 朽ち果て塵芥となり


その名は 人の(こと)にのみ語られ


のちには 誰よりも忘れ去らる


時はただいたづらにのみ過ぎ去りぬ


もしわが生命(いのち) 肉体(からだ)を失はば


この名をば 世より忘れしめよ


名誉(ほまれ)富貴(とみ)も 我が望みにあらざれば


もし汝 我を置きて去なば


我はなが名を 奥底にとどめたらん


汝の存在は今この時にこそ在れ


汝の名を聞きて汝を語るは 汝を知る者にあらず


汝を知るは汝をしかと視聴(みき)く人なり


我がいのち もとより短し


災福にわづらへる内 その人生は終はりなん


なんぞ 人生に(たか)き物を求むべき


万物そのつひに於いて 形なく滅びぬるならば


世に長らふるを いかで望まん


我はただ いづこにもなき所こそ行かまほしけれ


汝もしかり


理性に囚はれし奴隷の如くなりき 我らは


この世より脱け出でば 我はこの夢のごとき世界を唾棄せばや




(ことはり)と言ふ鎖を解きて 我らまた会はん


この世に無き所にて


この世の縛りを受けぬ所に


我ら意思を同じくして永らく語らはん

この詩は自分の思っているところを即興にしかもかなり気取って書いたものです。

人間は必ず人のやることには意味があると思って行動しますが、実際には本当にそうかどうかなんてわからないもんです。

そしてそれに対して希望したり絶望したりするのも、案外大事ではないという感じがこれを書いている途中にしてきました。

自分の存在意義に(他人に自慢するほど)価値を見出すなんて馬鹿げているが、かといってそれをやめられないのが人間のさがなんでしょうか。ちなみに自分はまだ人生で「悟る」ほどの域に到底達していませんし、ここで書いた考えものちのち変わるかもしれません。

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