ウナギイヌ
【二百文字小説コンテスト・参加作品】
「君はどうしてそんなに可愛いのだ」
火星人の彼は、水槽の中をうっとりと見つめながら呟いた。
それに呼応するように水槽の中の雌蛸は、水槽のガラスに触手にある吸盤を貼り付けた。 彼自身も手に付いている吸盤を水槽の外側から彼女の吸盤の辺りに貼り付けた。
「この隔たりさえ無ければ!」
彼は吸盤の吸引力でガラスを割り、雌蛸を魚籠に入れて持ち去った。
その直後に彼等からは『蛸星人』が誕生した。
過去に鰻犬が産まれたように。
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