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自爆から始まる異世界転生  作者: 江戸エド


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 ゾーイさんが生まれ育った町から一日歩いて、その翌日に山を越えただけの短い旅をして私が思ったのは、一人旅は想像以上に大変で危険だということ。

 

 (私に何か遭ったら意味が無い)

 クラスメイトを元の世界に返せるのは私だけだ。

 まだクラスメイト達がどこに居るか分からないけど、そこに辿り着くまで死ぬわけにはいかないし、旅が出来なくなってもいけない。


 そこでゾーイさんの記憶にあった隊商に入って旅をしようと思ったけど、雑貨店の物知りなお婆さんにボロクソに言われて、最後は立場を弁えろグミクズと言われた。


 でもその通りだと思ったから反感は抱かなかった。

 むしろ感謝している。

 だってお婆さんにゴミクズと言われるまで、頭では分かっていても自分の事だという実感が無かったから。

 例えるなら、おばさんと言われて初めて自分はもうそう言われる歳なんだなと実感するみたいな感じだろうか。


 とにかく、今までの自分は真っ当な人間なんだという自覚は捨てて、自分は流れ者(ゴミクズ)なんだという自覚を持つ必要がある。


 でないと私は当たり前の事を当たり前のように受け取って、人の親切に気付けないかもしれないし、騙されている事に気づけないかもしれない。

 お婆さんとの会話は私には銅貨十枚以上の価値があった。


 お婆さんの店を出た私は、宿泊している宿屋がやっている食堂で昼食を食べて散歩に出た。

 「持っておいて損はないよ」

 私をゴミクズと言ったお婆さんがカウンターに置いたのは、手の中に隠せる長さの棒手裏剣と鉤爪(かぎつめ)だった。

 合わせて棒銅貨5本(5万円相当)だったが、もちろん即買いである。

 

 腹ごなしの散歩ついでに買ったばかりの道具の性能を確かめる。

 棒手裏剣は重心の位置がよく考えられていて投げやすかった。携帯性も秘匿性も高いから、いざという時の奇襲や反撃に役立つこと間違なしである。


 鉤爪は手で持って使う事も出来るし、爪のつけ根にある丸い穴にロープを括りつけて使う事も出来る。

 主な用途は、崖や斜面の上り下りに使われるだろう。

 私は木の幹や枝に鉤爪を引っかけてぶら下がった。

 忍法ミノムシの術である。

 使いどころは分からないが、これを使えば素手では登れなかった木に登ることも出来るようになると思う。


 木の枝から飛び降りた私は、木の上から見つけた毒草の根っこをナイフを使って採取。

 みじん切りにしてナイフの腹で潰して軟膏とよく混ぜ合わせると吹き矢用の毒になる。でもまだ毒性は弱く、即効性もない。野犬に使用した場合は毒で心停止するまでに30分から一時間ぐらいかかると思われる。人間に使用した場合は心臓が止まるまでに4時間以上は掛かると思う。

 解毒には毒を中和する薬草の汁を針に塗って太い血管に刺す必要がある。

 毒草の根っこを刻んだナイフは、水と土でよく洗って火で熱して毒を無効化しておく。

 これで一先ずの準備は出来た。


 「出来てるよ」

 宿に帰る途中でお婆さんのお店に寄ったら、注文していた革の手袋がカウンターに置かれていた。色は茶色。素材はヤギの革。

 手に履くと、薄いゴム手袋みたいに手にフィットして、動かしにくいなどの不快感は無い。

 素人でも分かる、一流の職人の仕事だ。


 「職人組合(ギルド)に所属していなくても自分の腕一つで生きていけるのが本物の一流の職人さ」

 一流の職人が作ったオーダーメイドの手袋は金貨一枚じゃ買えない。

 「ありがとうございます。大切に使わせて頂きます」

 

 私は宿に戻ると、夕方まで眠って起きて宿の食堂で夕食を食べたら、宿の自分の部屋の窓からそーっと外に出て、誰にも気付かれないように村の外に出た。


 「神様の言う通り」

 私の脳裏に神様のお告げの光景が浮かぶ。

 「恐れ多くも我が神ダナヘトラ様。我に御業(みわざ)を与えたまえ。我が願いを邪魔するものを退ける御業を与えたまえ」


 私に(から)んできた組頭の額にダナヘトラ様のシンボルマークを刻んだのは、どのくらい離れていても生贄に捧げられるのか試してみようという思い付きで、まあ無理だろうなぁと思っていたけど、3百メートルくらい離れていてもダナヘトラ様に捧げられた。

   

 「こんばんは。いい馬ですね」

 街道を歩いていたら、後ろで誰かの気配がして、足を止めて振り返ると、10歳くらいの少年を乗せた馬の手綱を曳いている初老の男性ラウリさんが街道を歩いてくる姿が見えた。


 「命の恩人だからね。ポンと気前よくくれたよ」

 馬は農家にとって成功者の証だ。持っていると周囲から羨ましがられるし、どうか貸してくださいと頼られて感謝の言葉と共に金銭や物も貰える。

 いくら命の恩人でも、ポンとやれるものでは無い。

 むしろ、一番渡したくないものだろう。

 「我々が嫌われるのも無理はありませんね」

 私とラウリさんは並んで歩き出した。


 「組頭が私に仕返しをしないようにすると言っていませんでしたか?」

 「だから仕返しされなかっただろ?」

 「予定だと私はまだ村に滞在しているんですけど?」

 私が村に滞在している間、組頭が私に仕返しをするのを止めてくれるんじゃなかったのか?なのに何であんたはこんな所にいるんだよ。

 「そんな間抜けの面倒を見る義理が私と君の間の何処にある?」

 「馬を貰えたのは私のおかげですよね?」

 ラウリさんは頷いて言った。

 「だが馬は恩返しに十分な贈り物だ」

 だから組頭が私に仕返しするのをラウリさんが止める理由が無い。でも仕返しをすると知っていてそれを止めないのはバツが悪い。

 「だから問題が起きる前に出発しようということですか。我々が嫌われるのも無理はありませんね」

 






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