第6話 親子
陸夫の作り出した呪術的な系譜は脈々と影を濃くしていた。
政府も時折いやらしい顔をしてそれの視察をしに来ており、陸夫は巨頭兵に怯える政治家たちを見下しながらもイイ顔をした。
陸夫は、成長していく巨頭村を見て自分の計画のひとつが完了する日のことを考えていた。
陸夫の目的は日本人口の半数の消失である。
かつて自分が見た人間の汚い心というのを心底軽蔑していたので、陸夫は自分のこの目的だけは間違っていないものだと本当の心で思っていたし、みんなもそうだと確信していた。
ある日、村に母と息子がやってきた。
どうやら右腕のない夫に暴力を振るわれながら息子を守って、友人のツテでこの村まで逃げてきたらしい。
「どうします、陸夫さん」
青海は心配そうな顔をして、陸夫を見上げた。
「どうするもないよ。家を貸してあげなさい」
「ですね! ささぁ、こちらへ」
陸夫は小林という親子に巨頭村の実態を教えることはなかった。
なんの理由もなく、ただなんとなくだったが、信者や部下たちには「あの親子に我々のことを教えるのはいけないことだ」と伝達した。
陸夫は息子・小林哲次とよく遊んだ。
息子は痣だらけで、栄養失調を起こしているらしくあまり身体は強くなかったが、巨頭村にやってきてからよく飯を食えるようになり、笑顔を見せるようにもなっていた。
昭和三十八年。十一月三日。日曜日。
陸夫は哲次が誕生日だというので前もって買っていたブリキのおもちゃをを持ち、青海と一緒に小林親子のいる家を訊ねた。
しかし、戸を一度弱く叩いた際、頭の上にエクスクラメーションマークが浮かび上がった。
「陸夫さん‥‥‥それって」
「‥‥‥‥‥‥」
これは、昔からあった。
何か強烈な事が起きると、陸夫の中にある霊力や生命力といったものが警告を出しているらしく、それがエクスクラメーションマークとして身体の外に現れているのだ。
視覚化された危機感。
「何かが‥‥‥いるな‥‥‥」
二人は慌てて家の中に乗り込んだ。
小林親子は血の池の中に沈んでいた。
執着的な霊体が殺した痕跡を見出すと、「生霊を飛ばしてきたんだ」とつぶやいた。
「いったい誰が‥‥‥いや‥‥‥」
心当たりがあるのをわかった。
「だから嫌いなんだ‥‥‥ドメスティック・バイオレンスは。暴力的だから‥‥‥そりゃあ、そりゃあ、いつまでもこの村に置いておくわけには行かないだろうけど‥‥‥この村から出ていけるくらい安定するまでは、そういうのを忘れてさ‥‥‥」
陸夫は血溜まりに沈む二人の頬を撫でていた。
青海は「今更になってもなおいやなところで甘さを捨てきれない男」の背中を見つめながら言う。
「このご遺体はどうなさるんで」
「丁重に扱うよ。少し出てくる」
「何処へ?」
「‥‥‥‥‥‥」
貰い物に、と返して陸夫は家を出た。




