第5話 巨頭村
陸夫は自分に「特別な才能」があることを自覚してしまった。
自分が何でもできてしまう存在であるというアイデンティティを、その汚い血の中に見出してしまった。
すると、人格・精神の中にあった生きた倫理観や一文字組の彼らが培ってきた優しさといったものは簡単に消え去った。
陸夫は所詮馬鹿な女の息子であった。
そのために、レッカー・デイ──東京にある一家に拾われて、一時期その一家を洗脳し、宗教を始めてみたりもしたが、警察に怪しまれるとそれをやめた。
そして、自分にできることを確認していった。
どうやら自分は教祖になる才能があるらしい──と、理解すると、陸夫はこれからの事を考えるようになった。
太平洋戦争が終わるころになると、陸夫は鹿児島の集落に出て、その集落を呪術的な開発の場にした。
その過程で、死人の肉体を使い兵を作り出すことが出来た。
頭部に心臓から腸の臓器が新たに生成され、頭部はぶくぶくと太って、巨大な頭を乗せた「壊れにくい兵士」。
その兵士の量産ができることが分かるようになると、それを「巨頭兵」として、その集落も巨頭兵から取り、「巨頭村」と改めた。
巨頭村には毎年政治家がよく現れた。
その巨頭兵の性能を見て、「次の戦争があれば」という話が出た。
「やらんという選択肢はないのか?」
「ないんでしょうよ。私は人間というの、きらいだ」
「青海くん、君はよく生きてくれた」
毒は皿まで食っちまえばさぁ。
陸夫の中にはある計画があった。
それは、人間のすべてを使った盛大な楽しい祭を行うことだった。
巨頭兵を作っていると、途中で頭が増える事があった。
今までそういった巨頭兵は廃棄をしていたのだけれど、その双頭を使って、呪術を行うことにした。
「何、作ってんです?」
部下の一人がそう言ったので、一瞥してから「国を落とせるのを作んのよ」と返した。
「時代は有限ですぜ」
「だからさ。やれる事はやっておきたいだろう?」
「そうですね」
「君のその帳簿、なんだい?」
「以前先生がおっしゃっていた、『滝家』の家系図を改めてたんです。英雄になりうる人材を監視なさるんでしょう?」
「あれか」
以前、この部下にある一族の情報を集めるように言っていたのをようやく思い出した。
戦時中、自分に靡かない男が二人いた。
一人は滝天次。そして滝空太郎。聞けばふたりは兄弟であるという。
陸夫は脳の内側でその二人の精神のなかにある強烈な善性の光を感じ取り、鬱陶しくなって、背後から撃ったものだけれど‥‥‥。
「ひどいな、まだそんなにいるのか」
「はい。いかがいたしますかね」
「出来ればその血潰しておきたいが、もうそれも難しいかもしれんな。見つからないようにこそこそ動こう」
「わかりました」




