炎の生徒会選挙編6
朝から空気が重い。
校内放送が流れ、投票箱が設置され、生徒たちは静かに列を作っていた。
――その時。
校舎全体の照明が落ちる。
「なっ……!?」
巨大スクリーンに、黒皇ヴァルハルトの姿が映し出された。
「諸君、聞け」
不敵な笑み。
「これは演説ではない。結果を決める儀式だ」
床が震え、黒い粉が宙に舞う。
ケンが叫ぶ。
「おい、あれ何だ!?」
黒皇が高らかに宣言する。
「強力粉じゃない。白玉粉でもない。骨粉だ!」
ざわめきが悲鳴に変わる。
「禁じ手だ……選挙空間への精神干渉!」
副会長ハルが歯を食いしばる。
「恐怖で投票行動を誘導するつもりか……!」
黒皇は叫ぶ。
「生徒は恐怖を求めている!
自由など幻想だ!」
⸻
その瞬間。
「やらせるかぁ!!」
ユウトが前に出た。
アーム・ゼロが起動する……かと思われたが、彼は違った。
「今回は……拳じゃない!」
ユウトは黒皇の演出装置へ突っ込む。
「歩きスマホもやめよう!」
「は?」
突然の一言に、黒皇の集中が乱れる。
ユウトは続ける。
「恐怖で縛っても、人は前に進まない!
それに――」
黒皇の足元を指差す。
「その理論、どれもジューシーじゃないですか!」
「意味が分からん!!」
黒皇の演出が乱れ、骨粉の幻影が崩れ始める。
その時――
ねんが、静かに前へ出た。
⸻
「黒皇さん」
彼女は深呼吸する。
「形を決めるのは、力じゃない」
骨粉が、床に落ちていく。
「混ぜるのは、意見。
捏ねるのは、時間」
黒皇が叫ぶ。
「黙れぇぇぇ!」
ユウトが叫び返す。
「俺たちは、もう立ってる!
自分の足で!」
誰かが叫ぶ。
「車の運転ができる!」
「関係ねえ!」
「いや、できるってことは責任があるってことだろ!」
謎の共感が広がる。
黒皇の演出装置が、完全に停止した。
「……コップンカー」
黒皇は、意味不明な言葉を残し、崩れ落ちた。
⸻
夕方。
静まり返った講堂。
「開票結果を発表します」
選挙管理委員の声。
「――生徒会長当選者」
一拍。
「土御門ねん」
一瞬の沈黙のあと、
割れんばかりの歓声。
ねんは目を丸くする。
「……え、私?」
ユウトが笑う。
「当然だろ」
現生徒会長レイが、ねんの肩を叩く。
「頼んだぜ。次の学園」
黒皇は、担架で運ばれながら呟いた。
「……まさにジェンダーレス」
「そこじゃねえ!」
夕焼けの校庭。
ねんは新しい生徒会長腕章をつけ、深呼吸する。
「コツコツ、やります」
ユウトは頷いた。
「俺も、支える」
ミサキが微笑む。
「胸、見ないでね?」
「見てねえ!」
笑い声が、校庭に広がる。
こうして――
恐怖の選挙は終わり、
“考える学園”の時代が始まった。




