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アーム・ゼロ  作者: 境乃 シキ
7/10

炎の生徒会選挙編6


 朝から空気が重い。

 校内放送が流れ、投票箱が設置され、生徒たちは静かに列を作っていた。


 ――その時。


 校舎全体の照明が落ちる。


「なっ……!?」


 巨大スクリーンに、黒皇ヴァルハルトの姿が映し出された。


「諸君、聞け」


 不敵な笑み。


「これは演説ではない。結果を決める儀式だ」


 床が震え、黒い粉が宙に舞う。


 ケンが叫ぶ。


「おい、あれ何だ!?」


 黒皇が高らかに宣言する。


「強力粉じゃない。白玉粉でもない。骨粉だ!」


 ざわめきが悲鳴に変わる。


「禁じ手だ……選挙空間への精神干渉!」


 副会長ハルが歯を食いしばる。


「恐怖で投票行動を誘導するつもりか……!」


 黒皇は叫ぶ。


「生徒は恐怖を求めている!

 自由など幻想だ!」




 その瞬間。


「やらせるかぁ!!」


 ユウトが前に出た。


 アーム・ゼロが起動する……かと思われたが、彼は違った。


「今回は……拳じゃない!」


 ユウトは黒皇の演出装置へ突っ込む。


「歩きスマホもやめよう!」


「は?」


 突然の一言に、黒皇の集中が乱れる。


 ユウトは続ける。


「恐怖で縛っても、人は前に進まない!

 それに――」


 黒皇の足元を指差す。


「その理論、どれもジューシーじゃないですか!」


「意味が分からん!!」


 黒皇の演出が乱れ、骨粉の幻影が崩れ始める。


 その時――

 ねんが、静かに前へ出た。




「黒皇さん」


 彼女は深呼吸する。


「形を決めるのは、力じゃない」


 骨粉が、床に落ちていく。


「混ぜるのは、意見。

 捏ねるのは、時間」


 黒皇が叫ぶ。


「黙れぇぇぇ!」


 ユウトが叫び返す。


「俺たちは、もう立ってる!

 自分の足で!」


 誰かが叫ぶ。


「車の運転ができる!」


「関係ねえ!」


「いや、できるってことは責任があるってことだろ!」


 謎の共感が広がる。


 黒皇の演出装置が、完全に停止した。


「……コップンカー」


 黒皇は、意味不明な言葉を残し、崩れ落ちた。




 夕方。

 静まり返った講堂。


「開票結果を発表します」


 選挙管理委員の声。


「――生徒会長当選者」


 一拍。


「土御門ねん」


 一瞬の沈黙のあと、

 割れんばかりの歓声。


 ねんは目を丸くする。


「……え、私?」


 ユウトが笑う。


「当然だろ」


 現生徒会長レイが、ねんの肩を叩く。


「頼んだぜ。次の学園」


 黒皇は、担架で運ばれながら呟いた。


「……まさにジェンダーレス」


「そこじゃねえ!」



夕焼けの校庭。


 ねんは新しい生徒会長腕章をつけ、深呼吸する。


「コツコツ、やります」


 ユウトは頷いた。


「俺も、支える」


 ミサキが微笑む。


「胸、見ないでね?」


「見てねえ!」


 笑い声が、校庭に広がる。


 こうして――

 恐怖の選挙は終わり、

 “考える学園”の時代が始まった。

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