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アーム・ゼロ  作者: 境乃 シキ
6/10

炎の生徒会選挙編5



 満席の講堂。

 中央の円卓に、三人の候補が向かい合って座っている。


 現生徒会長・鷹宮レイ。

 ダークネス党候補・黒皇ヴァルハルト。

 第三候補・土御門ねん。


 司会の合図と同時に、火花が散った。



それは黒皇ヴァルハルトの主張から始まった。


「学園の問題は明白だ」


 黒皇が立ち上がり、腕を広げる。


「すべて社会が悪い。

 規律を失った自由が、生徒を堕落させている」


 一部の生徒が頷く。


「だからこそ、余が“正しき固さ”を与える」


 黒皇はレイを睨む。


「ぬるい改革など不要だ。生き恥を晒すがいい!」


 会場がざわついた。



 レイは静かにマイクを取る。


「……固さはな、押し付けるもんじゃねえ」


 一歩、前に出る。


「固さは愛だ!」


 その一言が、胸を打つ。


「生徒を信じて、時間をかけて守る。

 それができないなら――」


 黒皇を真っ直ぐ見る。


「これまでなのか?」


 拍手が起きる。


 副会長ハルは、即座に補足資料をスクリーンに映す。

 規律と自由の両立、その実例。




「……ちょっといいですか」


 ねんが、いつもの調子で手を挙げた。


「粘土は水で濡らすとヌルヌルします」


 会場「???」


 黒皇が苛立つ。


「何の話だ!」


「つまりですね」


 ねんは続ける。


「力を入れすぎると、形は崩れる。

 でも、水――つまり“余白”があると、強くなる」


 ざわめきが、理解へと変わる。




 討論は、日常の話題へ。


「長時間のスマホの使用は良くないよね」


 ねんが言うと、黒皇が即答する。


「禁止すればよい」


 レイが首を振る。


「違う。

 食事のときくらいスマホ見るのはやめようよ、って

 言える関係を作るんだ」


 その言葉に、生徒たちがざわっと反応した。




 黒皇が立ち上がり、ねんを指差す。


「理想論だ! 貴様のやり方では、統率など取れん!」


 ねんは一瞬、黒皇ではなく――

 観客席のユウトを見る。


「……胸ばかり見てるのバレてますから」


「えっ!?」


 笑いが起き、空気が一気に和らぐ。


 その隙を、ねんは逃さなかった。


「人は、完璧じゃない。

 だから、支配も放置も違う」


 深く息を吸う。


「混ぜて、捏ねて、失敗して。

 それでも前に進む学園を、私は選びます」




 沈黙。

 そして――割れるような拍手。


 黒皇は歯を食いしばる。


「……面白い」


 レイは、ねんに小さく笑いかける。


「やるじゃねえか」


 ユウトは、胸の奥が熱くなるのを感じていた。


 ――この選挙は、もう誰かのものじゃない。


 三者三様の“正義”が激突し、

 生徒たちは初めて、自分で考え始めていた。

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