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アーム・ゼロ  作者: 境乃 シキ
4/10

炎の生徒会選挙編3

翌日・昼休み。

 生徒会室の前は、異様な人だかりになっていた。


「……え?」


 ユウトが目を疑う。


「粘土工作部の部長が?」


 列の先頭に立っていたのは、

 作業着にエプロン、手には謎の箱を抱えた小柄な女子――

 土御門つちみかどねん。二年生。


 副会長ハルが書類を確認する。


「立候補届……不備なし。所属、粘土工作部」


 会長レイが思わず吹き出す。


「おいおい、どういう風の吹き回しだ?」


 ねんは箱を机に置き、深々と一礼した。


「静粛に。そこ!膝は着かない」


 なぜか周囲の空気がピンと張る。


 黒皇ヴァルハルトが腕を組み、鼻で笑った。


「余の選挙戦に泥遊びが混じるとはな」


「……泥じゃないです。粘土です」


 ねんは即答した。


「アイツは息を吸うように呼吸する」


 ケンがユウトに小声で囁く。


「え、今のどういう意味だ?」


「知らんけど、なんか強そうだ」


 ねんは箱を開ける。

 中には、白くてふくらみそうな粉。


「ベーキングパウダー?」


 ミサキが首を傾げる。


「はい。混ぜ方一つで、形は変わります」


 黒皇が一歩近づく。


「……なんか、いやらしいな」


「思想がですか? それとも比喩が?」


 ねんの切り返しに、周囲がどよめく。


 その瞬間――

 箱の端から、白い粘土状のものが床に落ちた。


「何か垂れてるよ?」


 会長レイが指差す。


 ねんは慌てず、足で軽く止めた。


「大丈夫です。これは“余剰分”」


 副会長ハルが目を細める。


「……あなた、分かっていて立候補したんですね」


「はい」


 ねんは顔を上げ、真っ直ぐ前を見る。


「この選挙は、二極化しすぎです。

 支配か、対抗か。どちらも“型”が決まっている」


 黒皇が低く唸る。


「何が言いたい」


「私は、“型を壊す役”です」


 空気が変わった。


 ねんは続ける。


「粘土は、圧をかければ潰れます。でも――

 正しく混ぜれば、強くなる」


 ユウトの胸が、ドクンと鳴る。


「……第三極」


 副会長が静かに言った。


 会長レイが笑う。


「面白え。選挙が一気に読めなくなったな」


 黒皇は舌打ちし、背を向ける。


「好きに踊るがいい。だが最後に立つのは――」


 ねんが遮った。


「“最後”を決めるのは、有権者です」


 その背中を見送りながら、ユウトは思った。


 ――この人、ただ者じゃない。


 こうして。

 生徒会選挙は、三つ巴へと突入した。

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