炎の生徒会選挙編2
生徒会室前。
夕方の廊下に、重たい足音が響いた。
扉が開く。
入ってきたのは、生徒とは思えない威圧感を纏った男だった。
漆黒の学ラン、金色の刺繍。
その背後には、ダークネス党の紋章を隠そうともしない取り巻き。
「……立候補用紙の提出だ」
副会長・九条ハルが即座に立ち上がる。
「名前と学年を」
「名は黒皇・ヴァルハルト。三年。党首候補にして、次期支配者」
会長・鷹宮レイが笑った。
「随分とでかく出たな」
黒皇は机に書類を置く。
その瞬間、空気が張り詰めた。
「これ即ち、宣戦布告」
生徒会室の奥で、ユウトは思わず息を呑む。
黒皇の視線が、一直線に――東雲ミサキへ向いた。
「……ほう。よもや、溢れるか?」
「なっ……!」
ミサキが一歩下がる。
「余が当選したら、彼女を妻に貰おうぞ」
その言葉が落ちた瞬間。
――ガンッ!
ユウトの拳が机を叩いた。
「ふざけるな!!」
黒皇は嗤う。
「怒りもまた票になる。若き英雄よ」
副会長ハルが一歩前に出る。
「立候補は受理します。ただし――」
「分かっておる」
黒皇は背を向ける。
「ポスターは明日には貼るぞ。学園中を我が顔で染め上げてくれる」
去り際、黒皇はふと時計を見る。
「……もう夕食の時間であるか」
取り巻きの一人が答える。
「はっ。安定剤の再調整には、鰹節粉が必要だと」
その言葉に、ケンが叫ぶ。
「だからそれ料理じゃねえって!」
扉が閉まり、静寂が戻る。
会長レイが低く言った。
「……来たな。本命が」
副会長ハルが眼鏡を押し上げる。
「選挙管理規約上、排除は不可能。正面から叩くしかありません」
ミサキはユウトを見る。
「ユウト……」
彼は力強く頷いた。
「選挙でも、戦いでも……俺は逃げない」
会長レイが不敵に笑う。
「よし。次は公開討論会だ」
副会長が続ける。
「言葉と覚悟で殴り合う舞台」
ユウトの胸が、再び熱くなる。
――この学園は、渡さない。
こうして。
生徒会選挙は、完全な戦争へと変貌した。




