地獄の期末テスト編
生徒会選挙から二週間。
蒼天高校は、奇妙な平和に包まれていた。
「……静かすぎない?」
新生徒会長・土御門ねんが、答案用紙の束を抱えながら首をかしげる。
「嵐の前ですね」
副会長に留任した九条ハルが眼鏡を押し上げた。
「期末テストが来ます」
――その瞬間。
校内放送が鳴り響く。
『全生徒に通達。
期末テストの難易度を“全面改訂”する』
ざわめく教室。
「改訂……?」
神代ユウトが嫌な予感に眉をひそめた。
⸻
職員室前。
黒い影が、掲示板の前に立っていた。
「……まさにダークネス!」
黒皇ヴァルハルト。
停学明け、なぜか補習担当の“特別協力者”として戻ってきていた。
「選挙で負けても、知の戦場は残っている」
彼は不敵に笑う。
「テストとは、序列を可視化する最も残酷な儀式だ」
ねんが即座に割って入る。
「お前の席はここではない」
「ほう?」
黒皇は指で掲示板を叩いた。
「成績下位者には、再試験。
再試験不合格者は、夏休み補習地獄」
生徒たちが青ざめる。
⸻
生徒会室。
「……また粉を使うのか?」
ユウトが警戒する。
ねんは袋を掲げた。
「今回は違います。理科です」
「それ前も聞いた!」
ミサキが黒板に式を書き始める。
「今回のテスト、単なる暗記じゃない。
問題の傾向が――」
ハルが続ける。
「“長時間集中できるか”を測る設計です」
ミサキが静かに言った。
「テロメアが関係しているな」
「なんで生物学!?」
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放課後の教室。
「制服姿も新鮮でしょ?」
珍しく制服のまま参加したねんが言うと、
ユウトが一瞬視線を逸らす。
「……」
「まだ生温かい」
「何が!?」
「集中力ですよ。今のうちに叩き直さないと」
机に積まれる問題集。
黒皇の差し金で、難易度は異常に高い。
黒皇が通りかかり、嘲笑う。
「努力でどうにかなると思うな」
ユウトが立ち上がる。
「……それでもやる」
「ほう?」
「選挙で学んだんだ。
考えるのをやめたら、そこで終わりだって」
⸻
教室は静まり返っていた。
問題用紙が配られる。
一問目。
――意味が分からない。
「……」
だが、ユウトは深呼吸する。
(混ぜろ。捏ねろ。考えろ)
ねんが前の席で、ペンを走らせている。
黒皇は廊下越しに呟いた。
「生き残れるかな……?」
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数日後。
「平均点……上がってます?」
教師が首をかしげる。
ねんが小さくガッツポーズ。
「……勝ちました」
黒皇は沈黙し、やがて踵を返す。
「……学ぶ者を侮ったか」
ユウトは笑った。
「テストも選挙も、同じだな」
ミサキが頷く。
「逃げずに向き合えば、結果は変わる」
⸻
夕焼けの校舎。
「次は何が来ると思う?」
ユウトの問いに、ねんは即答した。
「修学旅行」
「平和であれ!」




