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英雄愛好家の殺人鬼による英雄育成計画  作者: 夜野ケイ
第一章―――そうして、学園生活は幕を開を開ける
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第5話「第一次試験:筆記」

 いつの間にか居なくなってたヒロを見つけた私は、地を駆ける早馬のような速さで試験会場へと向かっていった。今度はヒロがいなくならないように抱えていくことにした。

「ちょ!?この状況普通逆じゃね?」

ヒロはお姫様抱っこされている状況でそう言ってくる。迷子だった身分のくせにうるさいですね。

「でしたら、また迷子になって来年受験しますか?後輩として可愛がってあげますよ?」

「………」

すると、どうだろうか。とたんにヒロは静かになって不承不承ながらもこの状況を受け入れることにしたらしい。顔が梅干を食べた後のようになっているからだ。

「ほら、一次試験は筆記試験なんですから頭の中で勉強の復習でもしてはどうです?」

私が魔王になる前の生家にいたころは実家のマネーパワーによって裏口入学する手はずとなっていたので試験の内容はよく知らないが、一次試験が筆記で二次試験が実戦訓練ということくらいはブリタニア王国民であれば1+1=2であるくらい当たり前にしっていることだ。無論、ヒロも知っているだろう。

「え?そうなの?」

「………」

絶句以外の言葉が見つからない。この男は私が知っている程以上に物を知らないようだ。だが、私の経験以上ではない。こうゆうタイプは次に……

「「まぁ、なんとかなるでしょ」」

発言が重なるとヒロは驚いたような顔でこちらを凝視してくる。

「どうしました?そんな幽霊を見たような顔をして?」

「いや、その、知り合いに同じような感じで俺の言ってくること先読みしてくる奴がいてなそっくりだと思って……」

「そうですか。ご友人に恵まれているんですね」

ぜひ、その友人と一回だけでもお会いしてみたいものだ。この単純脳筋さんの苦労話についてそれはもう有意義な話し合いができるでしょうから。

「……そうだな。恵まれてた。あいつはいい奴だった」

「……すいません。余計なこと言ってしまって」

どうやら、故人であったそうだ。こうゆう時人は失礼な詮索だったと謝罪するのが正しいことなのだ。まぁ、命の搾取が生きがいの私が言うのは何かおかしな話ですが……なんて考えていると試験会場の西校舎の講義室に到着して、私はヒロを引きずり下ろす。流石にお姫様抱っこしたまま教室内に入るわけにはいかないからだ。

「いで……もっとゆっくりおろしてれよな」

なぜか、尻から落ちたというのに頭をさするヒロ。もはや、何も言うまい。私はヒロのその行動を脇目で見ながら教室のドアを開ける。

「すいません、遅れました……」

「遅いぞ貴様ら!それでも騎士を目指そうとする者か!」

そう言って、肥えた腹を見せつけるような体系の男の試験管は水を得た魚の如く私達にしかりつけてきた。試験管は叱れる口実を見つけたかように生き生きとしていた。実際そうなのだろう。この人間モドキの豚はそうゆう人間であると見た目と言動からありありと伝わってくる。私が学生と言う身分に扮していて、ヒロを見守るという目的がなければ即刻この場で死体に変えてやるものだ。

「すいません、教官この度は私の落ち度です」

そう言って、私は試験管に近づいて行って頭を下げる振りをしながら手の中に輝く金貨を見せつける。金貨一枚でだいたい10万円ほどの価値がある。銀貨で一万円ほどだ。私の住んでいた魔界は地下資源が豊富なので眷属のゴーレムを使って地下資源である魔硬石マグネタイトを採掘して商会などに高値で売っている。魔硬石マグネタイトは魔法武具や魔道具などに使われるレアメタルなのでその市場価値はとても高いおかげで私は一財産を手に入れられることが出来た。財政チートと言う奴である。その全財産は全国店舗であるスイスイギルド運営のスイスイ銀行である。ふざけた名前のわりにその信用度は世界で一番と言っていいだろう。まぁ、つまりは私にしてみれば金貨一枚程度はした金であるということだ。こうゆう手合いには袖の下が一番効くのである。実際、この学園の入学試験の定員200名の内の100名つまり半数は貴族や成金などの中流、上流階級の者たちによる裏口入学で埋められてしまっている。この時代を象徴している状態だ。

「ふん。まぁ、その誠意に答えて今回は見逃してやる」

試験管はその金貨を教卓の下で受け取る。

「はい、ありがとうございます」

その金貨を試験管が懐にしまうのを冷めた視線で見ながら私は後ろでぼさっとしているヒロを引っ張って受験番号の席に座る。

「これより、試験を開始する!」

試験管の高らかな声が会場内に響き、先ほどまでガヤガヤとしていた試験会場には緊張の空気が流れ込んでくる。

「ルールは簡単だ。この二枚の答案に適当な答えを記入するだけだ。不正などがばれた場合……わかってるよな?」

当たりの見渡す試験管、先ほどの言動と言いこの男は『水に落ちた犬は打て』を地で行く性格をしている。典型的な心が腐った大人だ。しかも、恐らく不正がばれてもある程度は賄賂で誤魔化してしまうのだろう。こみあげてくる嫌悪感と殺意を抑えながらなんとかペンを持って配られた答案用紙をひっくり返して問題に目を凝らす。こうしていると学生時代に戻ったような気分になる……

「まぁ……」


――――問題が簡単すぎるのだが……


問一とか酷いぞマジで、何だよ自分の名前を書いてみましょうって問題じゃえねぇだろこれ、テストの枠に書く奴だよこれ……しかも、これだけかと思ったら他の問題も……


――――この四角形の面積を求めなさい。


――――(3×2)+12を答えなさい


――――唯一神の御名を答えなさい


困難ばっかである。小学生かな?小学生だね……考えてみれば当然である。この筆記試験をまともに受けるのはほとんどが平民や農民である。つまりは字を扱う環境下にいなかった連中が大半なのだ。貧乏商人の息子などもは少し例外なのだが、この時代は学問など平民、ましてや農民に教えるわけがない。それでもこれは酷いと感じるのはきっと、前世の影響なのだろう。この世界の文明レベルだと識字率なんてかなり低い。上位の特権階級や商人以外使う機会なんてないのだから字の読み書きができるだけでこの時代は上位に立てるのだ。まぁ、だからこそ、騎士団と言う警備組織に身内を送り込んで自分が有利になるよう動かすための駒として魔力を持って生まれた平民やら農民の中で頭が切れる子を選出して教育を施すのである、そしてこうして結果をこの試験で表すのである。騎士団に入れば指令書やら報告書を書かなければいけなので時の読み書きは必須なのである。だから、まぁ、この問題がでるのは可笑しくはない、寧ろまっとうなのである……。

 

 いやでも前世の日本で義務教育を受けた身としては馬鹿にされていることこの上なく感じる。ヒロも流石にこれは解けるであろうと思われるが……

「うーん……」

えぇ……できてない……いや、流石に算数とか名前を書くとは出来てはいるけど問題なのは宗教関係である。この国ブリタニア王国の司法権は教会が担っているので唯一神教と密接なかかわりがある。だからこそ、この国の人間として唯一神の名前とか天使の話とか知らない方がおかしいのである。日本で言えば桃太郎とか浦島太郎のおとぎ話聞いたことないとか抜かすようなものである……流石に見ていられない。

「ヒロ君、私の答案用紙みなさい。今更そんな問題で落ちたくはないでしょう?」

そう言って私は答案を隣の席だったヒロの方に動かす。さっき山吹色のお菓子を送ったのだから一回のカンニングぐらいは見逃すだろう。現に、試験管が私たちの方を一回見た後そっぽ向きだしている。

「いや、その気持ちは嬉しい……だけどなリン」

ヒロは私の答案用紙を手で押し返して宣言する。

「そんなズルで合格するくらいなら俺は騎士になりたくねぇ」

真っ直ぐな目でそう言ってきた。その目に私は見入ってしまった。その赤い情熱の目……熱意が炎として表したかのような真っ赤な赤茶色の髪さえ彼の正義感を象徴していた。あぁ、やっぱり……


あなたは私の英雄にふさわしい。


そう確信して私は答えを見せるという浅はかなことをしようとしてたことを恥じてそっと答案用紙を自分の所に戻す。それに焦ることは無い。宗教系の問題は4問である。つまりは10問しかない問題の中でたった4問である。凡ミスが無ければ十分合格できるだろう。あとは二次試験を頑張るだけである。

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